君と共に紡ぐ調べ

       第5章 育(ハグク)ム命 −6−

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「ユナ、私はエドワードとメリッサの友人として来たから

 皆にはそう説明してね。」

慧は困惑しているユナにそう言った。


結婚式には、慧を知っている貴族の姿もあったが

おもにエドワードとメリッサの親族が多く

聖画や聖像でしか慧の存在を知らない。


そして、エドワードやメリッサ、ユナも王城のことは

あまり外では話さないようにしているので

3人の地位を知らないものも多いのだ。



「ユナ、私はナバラデルトに来て初めて友達になった

 2人に会いに来ただけなんだ。

 だから、式も片隅でそっと見て祝福したい。

 私だってわかると騒ぎになるからなるべくひっそりと・・・。」


「わかりました。式の時はそう致しましょう。」

ユナはそう言うと、居間にむかった。


ナバラーンの一般的な結婚式は新郎の家の居間に簡単な神殿を作り

そこの前で桜龍の神官を呼び宣誓の儀を行う。

神官が龍王並びに龍妃に祈りを捧げて、式を終える。


その後、中庭に移動してパーティが行われる。

初めに新郎・新婦の挨拶が終わってから、参列した人全員が

お祝いの言葉をのべるのだ。


(慧は結婚式に参加したことがないのでここは知らない。

 ちなみに神官の勉強はしていたので結婚式の式次第や祈りは知っている。)



慧は、闇龍の術を使い、自分の周りに結界を張って、

自分の存在が目立たないようにした。


神官とエドワード・メリッサ・立会人の貴族数人が入ってくると

厳かな式がはじまった。

エドワードは、シックな新緑色のローブを着ていて

かっちりした王城の制服より若々しく見える。

メリッサはクリーム色のドレスを着てベールを被っている。

その姿はとても清楚で美しい。


・・・うわあ、エドワードかっこいい!!メリッサきれい!!・・・

慧はそう思いながら感動していた。



ユナはそんな慧を心配そうに見つめる。

結婚式が終わると、皆が立ちあがり、中庭に移動した。


慧は帰ろうと思ったが、ユナが強く引きとめたので

中庭に一緒に移動して、目立たないように木の陰の方に立った。



エドワードは幸せそうにメリッサの肩を抱いて現れ、

挨拶をする壇に登った。


「今日は、私達の結婚式に集まってくださって

 本当にありがとうございました。


 皆様が見守ってくださる前で、先ほど無事メリッサが私の妻になりました。


 数年前、私もメリッサも生きている実感が湧きませんでした。

 時の過ぎいくままに朽ち果てていくものだと思っておりました。


 しかし、私達はまばゆいばかりの1人の方と出会いました。

 その方は、とても優しくて気高くて我々の道標になって下さいました。


 そしてその方を共に支える同志がメリッサでした。

 時は過ぎ、龍王様の結婚と同時にナバラデルトは変わりました。

 人の街も龍の街も活気がでて、以前ほど溝が深く無くなりました。


 私達の王城での立場も変わりました。

 その中でも、いつもそばにいてくれた人はメリッサで

 この人なら、共に生きて行けると思い、結婚を申し込みました。


 本当は、私の仕える方にもこの姿を見て頂きたかったのですが、

 都合がありここにはおりません。でも、きっと喜んで下さっていると思います。


 皆様、これからもより一層我々をよろしくお願いいたします。」

エドワードは、そう言って締めくくった。



慧の目から涙がこぼれた。

初めて、ナバラデルトに来たときのことが昨日のように思い出せる。

そして、2人の幸せを心から祈った。


新郎と新婦が降りると、次々と皆が壇にのぼりお祝いの言葉を述べた。



「龍妃・・・いやケイ様、どうか、2人にお祝いの言葉を・・・。」

一区切りがついて壇上にあがる人が減るとユナはそう慧に頼んだ。

「えっ・・私・・何も考えていない・・・。」

慧は驚いたように言った。


しかし、エドワードとメリッサの為ならばと

思い直し、ゆっくりと壇に向かって歩き始めた。



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