君と共に紡ぐ調べ

       第5章 育(ハグク)ム命 −3−

本文へジャンプ




夕方、リュークは執務に戻った龍王の元を訪れた。

「龍王様。今、よろしいですか?」

「リュークか?少し待ってくれ。もう少しでこの書類のサイン終わるから。」


リューゼは、書類にサインをしながら

補佐の龍、2人に代わる代わる渡している。


ただサインしているだけでなく、問題がある書類は

きちんと省いて、目の前の箱に分けて入れている。


リュークは、ソファに掛けてリューゼの仕事が終わるのを待っていた。


・・・何だか、リューゼ。もの凄くげんきですね。・・・・


リュークは、離宮でベッドから外に出れなくなった慧とファルを

思い浮かべながら思った。

2人とも腰が抜けてベッドに起きあがることすらできないのだ。



「それで、リュークどうした?」

リューゼが机から立ちあがって言った。

補佐の龍ももういない。


「ケイ様の体調が戻られたからと言って、

 すぐに抱いたでしょう?」

「ああ。そうだが・・・。それが何か?

 慧を抱くことは、今は政務よりも大切なことだが・・・。」

リューゼは片眉をふっとあげながらそう言った。


「まあ、それはそうなのですが・・・・

 実は、ファルのお腹の卵が貴方達の行為に感応するようで・・・。」

「感応?と言う事は、慧の受けている快感をファルも?」

「ええ。なので出来たら、昼の仕事中はケイ様を

 抱くのを控えていただきたいのですが・・・。」



「リューク、それは無理な相談だ。」

「はあ?」

「あの可愛い慧に離れたくないと言われれば

 抱かないわけにはいかないだろう?

 それに私はこれでも仕事の為に抑えているのだが・・・。」


「そうでしょうけど・・・?」

「リュークなら、ファルの仕事引き継がなくても

 できるだろうに?

 だから、私は、初めから銀の龍は仕事を引き継ぐように言ったはずだが・・・。」

「わかりました。私の方で何とか致します。」

リュークはそう言うと立ちあがり部屋を出て行った。



リュークが出て行くと、隣の部屋のドアが開き、

ロベルトとガイが入って来た。


「リューゼ、お疲れぇ。」

ロベルトがそう言いながらさっきリュークが座った

ソファにどっかりと腰を落ち着ける。


「ありがとう。リュークが来るって知らせてくれて。」

「リューク何かとファルに頼っているからねぇ。

 それよりも聞くか?今日のファル。」

ガイもロベルトの隣に座りながら言った。


「ああ。聞く。リュークにはああ言ったものの

 一応、慧を抱く時間を考えなくてはならないしな。」

リューゼはそう言いながら悪戯っ子のように微笑みながら続けた。

「それになんて言ったって、興味あるしな。」


「あ〜〜〜。黒い笑顔。慧には絶対見せない顔だなあ。」

ロベルトもそう言いながらにやっと笑った。


何かと騒がしく悪戯好きと言えば、ロベルトとガイだが

実は、小さな時からその後ろを追っていたのはリューゼなのだ。

そして、末っ子の特権で怒られるのがロベルトとガイなのだから

余計質が悪い。


3人は楽しそうに顔を寄せ合って話をしはじめた。




「ファル、具合が悪いって聞いたんだけど大丈夫?

 これ、ファルの好きな花。」

翌朝、慧は中庭で花を摘んでファルの寝室に行った。


「ありがとうございます。慧は体調どうですか?」

ファルはベッドから起きあがりながら言った。

まだ、腰が重いのに目の前の慧は元気だ。

「うん!!元気だよ。ファル、それよりも大丈夫?

 無理していない?

 リューゼも心配していたよ。」

ファルは心配そうな慧にまさか原因が貴方だなんて

言えなかった。


怒りの矛先はもちろん、リューゼに向かう。

「ええ。大丈夫ですよ。」

慧に向かってにっこりと微笑みながらも

胸の中では「あの、おやじ(※注ファルの中ではリューゼ、親父呼ばわりされています)

今に見ていなさい・・・。」と考えていたのだった。




INDEX BACK NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.