君と共に紡ぐ調べ

       第4章 金ノ卵 −7−

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リューゼは、片手で布団を剥ぐと慧を静かに横たえた。

慧は、ハアハア荒い息を吐きながら体を震わせている。

「ケイ・・・可愛そうに・・・。」


リューゼはそう言いながら汗でべっとりはりついた髪を

優しく払った。

「リューゼ・・・俺・・怖い・・そばにそばに・・・。」

リューゼは「ここにいる。」と慧の手を励ますようにぎゅっと握った。



その時、バタバタ走る足音が聞こえ、開け放たれた扉から

リュークとファルと蒼龍が入って来た。

「ケイ・・診せてもらいますよ。」


リュークは、慧を落ち着かせるように微笑みながら蒼い光を手から出し

慧の体を診る。

ファルは、リュークの持ってきた医療用具を手際よく

ナイトテーブルに並べた。



「クッ・・・。」激しいおなかの痛みに慧の体が九の字になった。

「ケイ・・・前も言ったとおり、卵がリューゼの核精に耐えれなくなって

 出ようとしているのです。

 卵を出しやすいように、卵の出る場所をマッサージをしなければなりませんが、

 私が致しましょうか?」


「だめだ。ケイ、マッサージなら私がやって良いだろう?」

リューゼは、慧の手を握りながら口を挟んだ。

「リュー・・ゼ・・お願い・・・。」

リュークは、リューゼに香油の瓶を渡すと、言った。


「痛みが強くない時にほぐしてやってください。

 ファル、下準備をして来なさい。」

ファルは、頷くとバスルームに消えた。



慧が卵を産んだら、ファルはその卵を体内に受け入れる。

卵室からの管は腸に繋がっているので、浣腸をして薬を飲む。


そうすることによって、本来の腸内の管が狭くなり

卵室への管が太くなるので、卵がまっすぐに卵室を目指すことができるのだ。

ファルはバスルームの壁のようになっている棚を開けると底には細長い棚と

普通の扉よりも棚の分だけ細い扉がついていた。


ファルは、細長い棚から飲み薬を取り出すとそれを飲み、

トイレに戻って処置を済ませた。

そして、細い扉を開け、中に入るとクローゼットから

白い夜着に着替え、ベッドに腰掛けた。




「うっ・・・。」

慧は定期的に来る体の痛みに懸命に耐えていた。

リューゼが丹念に蕾のマッサージをしてくれるので

時々それに快感が混じる。



「ケイ・・・少し力んで・・・。」

リュークに言われながら慧はふっとおなかに力を入れた。

「うーーーーっ。」

あまりの痛みにうなり声がでる。


「さあ、ケイ・・頑張って・・・。」

リュークの声が部屋に響いた。





ファルのいる部屋の廊下の扉がすっと開き、大きな人影が見えた。

「ジーク?」ファルは驚いたように言った。


「ケイの産卵がはじまったって聞いた。

 リュークに頼まれてファルの用意をする故、

 横になって力を抜け。」

そう言いながら、ジークは香油の瓶を取り出した。



卵を取り出す慧もそうだが受け入れるファルも蕾をほぐさなければ

ならない。それでも、他人に見せることのない部分を晒すのはとても

とても恥ずかしくて、ファルは横になってもなお、身を硬くして戸惑っていた。



「ファル・・今宵だけは恋人になろう。」

そう言いながら、ジークは、ファルにキスの雨を降らす。

ファルも、心を決めたようにジークの首に手を回すと

ジークの胸に顔を寄せた。



ジークは、優しくファルの髪を撫でると胸の飾りを刺激する。

「あ・・・ぁ・・・・。」

ファルが涙を流しながら両手で口を塞ぐ。


「ファル。今宵のことは夢・・・

 夢の中ゆえ、我慢することはない。」

「あああ・・・あ・・。」

ファルは、夢中で胸に愛撫を続けているジークの頭をかき抱いた。





「リュ・・・ク・・・たぶん・・・もうすぐ・・・。」

慧は痛みに喘ぎながらふっと力をおなかにいれる。


すると何かが外に出る感覚がしてその瞬間に

あれだけの痛みが嘘のようにおさまった。

「頑張ったね。ケイ。ほら」

リュークの手には金色に光る楕円形の卵があった。



リューゼが慧の手をとって卵に手を翳させると

「ドクン」「ドクン」と命の鼓動が手を通じて伝わってきた。

「頑張って顔を見せてね。・・・俺も頑張るから。」

慧は、小さな声で卵に話しかけると、

リューゼも手を翳し祝福を卵に与えた。



「それでは、私は次の処置をしてきます。」

リュークが卵を持ってバスルームに消えるとリューゼと慧は

どちらからともなくキスをかわした。



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