君と共に紡ぐ調べ

       第4章 金ノ卵 −3−

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「ただいま。戻った。」

リューゼが慧を抱えて聖離宮の居間に現れた。

腕の中にはぐったりとした慧が抱えられている。


「随分、無理をさせたようで・・・。」

あきれたようにリュークが言うとリューゼが肩をすくめながら言った。

「いや・・・あちらに行っていると、人の目が気にならないからな。

 これからも使う。とりあえず、慧をベッドに寝かせてくる。

 それから、銀の龍は薬飲むように。」

リューゼはそう言って部屋を出て行った。



「あいつら、この3日、やりあっていたんだぜ。きっと。」

「ガイ。そうだよな。我が弟はよほど溜っていたと思うしな。」

「ガイ、ロベルト!何を話してるんです。」

リュークが2人を軽く殴りながら戒める。



「やっぱり、蒼龍が長男な方がいいよ。

 紅龍長男だったらまずいぞ。」ジャンが言う。

「ああ、我が父ながら恥ずかしい、しかし

 蒼龍長男には賛成だ。」アルも口を開く。

「それを言うと、桜龍も上の方が良いですね。

 私も、助かると思いますし・・・。」

ファルがにっこり微笑みながら言うと、なぜか他の銀の龍は

ファルと目を合わせないようにしながら椅子に座りなおした。



少しして銀の龍達は懐から、丸い薬入れを取り出して

薬を取り出した。

リュークは水差しからコップに水を移し

他の当主達も自分の息子のそばに来た。


銀の龍達は、意を決してその薬を口に含み

水を飲む。

「うっ・・・。」

体が熱くなり激痛が体を走った。


当主達は、自分の息子を抱きしめた。

皆が体を折り曲げ目の前の父親の服や手を掴む。

「がんばれ・・・。」

当主達が言えるのはその言葉くらいだった。


そして、当主達の腕の中で痛みがおさまった銀の龍達は

体の力を抜きながら次々に意識を手放した。





慧は、喉が渇いて目を覚ました。

目の前にリューゼがいて、目を合わせただけで

水差しからコップに水を注ぎ差し出してくれた。


「あ・・りが・・・とう。」

なんだか声もうまくだせない。


リューゼは慧を後ろから支えて水を飲めるようにしてくれた。

「無理をさせたな・・・。水を飲んだらまた休め。」

リューゼはそう言ってコップをナイトテーブルに置くと

慧を抱きしめたまま横になった。


「し・・・あわせ・・・。」

慧はそう呟くとまた眠り始めた。

リューゼはそんな慧の顔や首筋にキスの雨を降らせると

自分も目を閉じた。





次の日、慧が目を覚ましたのは日が高くなってからだ。

起きあがろうとしても体に力が入らない。


不思議と、ここ数日食事をしなくても

空腹感はあまり感じない。

「あれ・・・?この部屋は?」


慧は、城でいつも寝ていた部屋と違うことに驚いて

周りを見渡した。

城の内装はとても品位が高く、高価な家具が堂々と置いてあったが

この部屋は壁紙もクリームイエローで

なんとなく優しい雰囲気の部屋である。


「引越ししたのですよ。」

そう言いながら、リュークとファルが部屋に入ってきた。

慧が動けないのを知っていたように、

ファルが手際よく慧の背中にクッションを入れ、

リュークが果実水をストローのような草で飲ませた。


「何か、ファル?雰囲気が変わった?」

慧が聞くと「薬を飲んだからでしょうか?」とファルが答え、

スプーンでメロンのような果物をすくって慧の口元に持ってきてくれた。

それは、冷たくてとても美味しかった。


リュークは、慧の額に手をやりながら言った。

「やはり微熱出ていますね。果物食べ終わったら少し診療いたしますね。」


「ファル、どこか悪いの?薬飲むって?」

慧は心配そうに言うと、リュークとファルは慧を凝視して言った。

「まさか・・・龍王様から何も聞いてないのですか?」

ファルが言うと、慧は頬を染めて頷いた。


「いくら溜まっていたからって限度があるでしょう。まったく。」

リュークがあきれたように言った。




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