君と共に紡ぐ調べ

       第4章 金ノ卵 −1−

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リューゼは、慧を抱いたまま空間を飛んだ。

向かうのは、金の龍のパワースポット。


光が2人を包み、抜けた場所は美しい島。

目の前には、コバルトブルーの海が広がる。

島には、こじんまりとしたアジアンリゾートにあるような

ヴィラ風の家が建っており

外には暑さを避けるための東屋があった。

リューゼは、そのまま家に入るとベッドルームに入り

慧をベッドに寝かせ、その横に入ると

真っ白なシーツを掛けて、慧を胸にしっかりと抱き寄せた。


「慧・・今はぐっすりとお眠り、起きたらもう寝かせない。」

リューゼはそう言いながら慧の額にキスを落とすと

自分も目を閉じた。



次の日の朝、ナバラデルトの龍王の城では、

当主達と銀の龍達が中庭に建っている

聖離宮と呼ばれる建物の居間に勢ぞろいをしていた。


「今日から、龍王様、龍妃様、金・銀の龍はここで生活する。」

リュークが口を開いた。


「ここには、随分人も少ないな。ここの宮はなんなのだ。」

ガイが当惑したように言った。

他の当主達も不思議そうな顔をしている。


「この宮は、子供を為す為の宮だ。

 次期龍王並びに次期当主達はここの宮で生まれる。

 もちろん、龍王様も我らもここの宮で生まれた。

 そして、人が少ないのはここの宮の使用人は代々ここの宮で働いている

 蒼龍と人の一族しかいないからだ。その者達はここの宮で生まれ、ここだけで生活し、

 ここの宮で死ぬことが許されている。」


「つまり、それだけ子を為す事は特殊だということなのですね。」

イアンがそう言った。

リュークはそれに頷きながら言った。



「ああ。そもそも人でも龍族でも男が子を産むというのは

 特殊であろう。」

「それは、龍妃様に限られた話ですよね。」リンエイが聞く。


「いや、それは違う。

 私も、この話を今日までできなかったのは、この宮でしか

 この話をしてはいけない決まりがあるからだ。

 銀の龍達よ。心して聞きなさい。

 子を産むのは、龍妃だけでない。

 産むのは、銀の龍達も一緒だ。」

そこにいた銀の龍達は驚きのあまり固まった。



「父上・・・詳しく教えてください。」

ファルが硬い口調で言った。


「まず、普通の妊娠について話をしよう。

 龍は、男の龍が女の龍を抱くことで妊娠する。

 詳しく言うと、女の龍には卵室という部屋があって

 そこから、「核卵」という液体がでる。

 そこに男の龍が「核精」という液を注ぐ。

 そこで、小さな卵ができる。

 その後、その卵に「核精」を数回注ぐことにより、

 卵が直径5センチくらいまで育つ。

 この卵を初期卵と言う。

 その時期になると卵の分泌する液により

 男の龍が注いだ「核精」と卵室にある「核卵」が

 変化して「核育」という液になり、卵に成長を促す。

 そして、卵は15センチ位に成長して卵室で割れて、

 龍が空気を求めて女の龍の体から出る。

 ここまで、理解できたかな?」

皆は、黙って頷いた。


「それでは、これからの話をしよう。

 龍王様が龍妃様を意思を持って抱いた時に

 龍妃様に卵室ができる。

 そして、何度か抱くことにより、卵が初期卵に育つ。

 龍妃様の卵室の初期卵は、龍王様の「核精」の力の強さに

 耐えることができずに出産という形ではなく

 産卵という形で外に出る。」


「その卵を銀の龍が守るんだよな?」ロベルトが聞くと

リュークは頷きながら続けた。


「一般に守ると言われているが、実際は違う。

 銀の龍達は、薬を飲んで、強制的に卵室を作る。


 同時にその薬は、龍達の卵室と性器を繋ぐ。

 簡単に言うと銀の龍の体は自分の核精を卵室に

 そのまま注ぐことができる体になる。

 そして、時が来たら出産という形になる。」

「と・・・言うことは自分で・・・?」ジャンがあわてて言った。


「うーーん。そこまでは、文献には書いていなかったのですが、

 自慰をするという意味ではないようなんだ。

 とにかく、、他の銀の龍や当主が協力する必要はあるという旨の

 注意書きはあったが・・・。後は、体験しなければ何とも・・・。」



「それで龍妃様は、どうなるのですか?」ニコライが言った。

「龍妃様の体の中でも「核精」に負けない抗体を作り、

 それができあがった時、つまり、8回産卵した後に

 卵は卵室に定着して次期龍王を産む。」


そう言って、リュークは龍王から渡された金の粒を差し出した。

「これが、その薬だ。龍王様が作れる秘薬とされている。

 そして、次期当主の生まれる順番は計画できますので、

 皆で考えましょう。」


その金の粒を見ながら銀の龍達は呆然としていた。

まだ、その説明に頭がついていってなかった。



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