君と共に紡ぐ調べ

       第3章 過酷ナ3日間 −8−

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汗だくになって床に座った慧に

男が瓶を差し出した。

「坊主。飲め。」


慧はその瓶を受け取って少し飲むと思わず噴出した。

「こ・・・これって・・酒?」

「ああ・・・そうだが?」

男は慧の手から瓶を取りあげるとごくごく酒を飲んだ。

女達も酒の瓶をクイクイあおっている。



慧は床にへたりと座ったままだ。

ここ3日きちんとした睡眠を取っていないので

体が熱くなって酒が回っているような気がする。


「う・・・ん・・暑いなぁ・・・。」

慧の口調はどこか舌ったらずだ。


「あははっ。酔った?」

女は笑いながら言った。



慧は、完全に酒がまわったようで

ケタケタ笑い始め、服を脱ぎ始めながら

大きな声で歌を歌い始めた。

男が暑いな・・と呟きながら窓を開けた。



それと同時に棺桶が2つバタンと開き、

フェルとジークが驚いたように慧を見つめ、

大声で言った。

「「窓を閉めろ!!」」


男が慌てて窓を閉めようとしたが、

黒い影が大量に窓から部屋に入って来たので

窓を閉めることができなくなった。



「な・・・に?」2人の女は驚いて尻餅をついた。

部屋の中には大量のコウモリのような鳥や

白い聖鳥と呼ばれている鳥が歌っている慧の

周りを飛んでいる。



フェルがすかさず結界を張り、ジークが慧のそばにいくと

慧がジークに擦り寄ってそのまま腕の中で眠り始めた。

「この鳥・・・どうするんだ?」

ジークは部屋の中を見渡しながら小さな溜息をついて言った。








龍王の住む場所、ナバラデルト。

フェルとジークは疲れた顔をしながら、

廊下を歩いていた。



ジークの腕の中では、慧がスースー寝息をたてている。

龍王の執務室に入るとそこには、当主達と銀の龍が待っていた。

「フェル、ジーク。苦労かけたな。」


リューゼは、そう言いながら眠っている慧をジークから受け取り

そのまま上座の椅子に座りながら、静かに言った。

「リューク、もうパワースポットを5つも回ったのだから

 事を成して良いか?」



リュークは立ちあがってリューゼの膝の上で眠っている慧に手を翳した。

その手から蒼い光が流れ、慧の体の様子が

リュークに伝わってくる。


リュークは小さな溜息をつくと、ファルに目で合図をした。

ファルは、懐から蒼い水晶のような石を出した。

ファルが石を慧の上にかかげると、石から蒼い光が

慧に注ぎ、消えた。


終わると、白龍の当主、リンエイが白い石を取り出し、

同じように掲げると白い光が慧の中に入っていく。


次に翠龍の当主、イツァークが翠色の液体の入った瓶を差し出すと

リューゼがそれを口に含み、慧に飲ませた。


慧はよっぽど疲れているのか起きる気配もない。


「リューク?」

リューゼはリュークの方を向いて聞くとリュークは微笑んで言った。


「龍王様、いくら体が適すようになっていても

 龍妃様は華奢です。それをお忘れなく。」

「わかった。これを。」

リューゼは、手のひらの上に金の粒を浮きあがらせ、

それをリュークに手渡す。


「ありがとうございます。私が責任を持って為しますので・・。」



リューゼは、頷いて言った。

「よろしく頼む。」

そう言うと同時にリューゼは金色の光に包まれて消えた。




そこにいた者は思わず、それと同時に力を抜いて椅子に座った。

「リューゼ。相当怒ってたぞ。」

ガイが疲れたように言った。


「笑顔でも、殺気バリバリでしたね。

 妃様は、大丈夫でしょうか?

 んっ。皆さん、大丈夫ですか?」


イアンがぐったりしたように座っている銀の龍達に向かって言い、

ルネは立ちあがると、真っ青な顔でブルブル震えているルイを

抱きしめて背中をポンポン叩いた。


皆が心を落ち着かせるためには少し休憩をいれなければ

ならない気がした。



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