君と共に紡ぐ調べ

       第3章 過酷ナ3日間 −7−

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「「どうする?」」


フェルとジークが顔を見あわせて言った。



この親子はとても口数が少ない。

2人は、何と空の上に建っている館の前にいた。


その館はとても怪しげな感じで

ヨーロッパの古い城のような外観だ。

「おこ・・・すか?」


フェルは、慧をゆさゆさと揺さぶってみる。

ジークは、頬を軽くピタピタ叩いて

「ケイ、起きなさい。」

と言った。



「う〜〜〜ん。あ〜〜〜。フェルとジークだぁ。」

慧は2人を見てへにゃっと笑った。

下におろされても眠くて一生懸命目を擦っている。

その様子は幼い子供のようでフェルとジークの口元が

少しだけ緩んだ。



「それで、ここが闇龍のパワースポットだ。

 一応、個室を用意したから、中で眠るがよい。」

慧は嬉しそうに頷いた。

そう、今慧が欲しいのは、食べ物でも何でもなく睡眠なのだ。



フェルが大きな扉を開けると

執事のような格好をした闇龍がフェルに恭しくお辞儀をして

鍵と袋を3つ差し出した。


フェルが鍵を貰うと1つの部屋へ歩いて行った。

部屋に入ると慧は驚いたように目を見開いた。

部屋の真ん中がぽかりとあいていて

それを取り囲むようにドラキュラの眠るような棺桶が10個

並んでいた。



フェルは慣れたように3つの棺桶の蓋を開けると

そこは紅いベルベッドのような布が敷き詰められていた。

「使用方法を読んで横になりなさい。

 ちゃんと読まなくてはいけないぞ。

 眠ったら自然と蓋が閉まる。」

フェルは、そう言いながら慧に袋を渡した。



慧は、フェルに促されて棺桶の中の紅いベルベットの上にちょこんと座り

袋の中を見た。

袋の中には、ちょっとしたお菓子と飲み物、そして色々なグッズと

薄い本のような説明書があった。

慧が読み出したのを横目に見てフェルとジークも同じように

座った。



それと同時に慧の棺桶の蓋がバタンと音をたてて閉まった。

フェルとジークも顔を見合わせて頷くとそのまま横になった。

しばらくして2人の棺桶の蓋もバタンと閉まった。




・・・・何か・・浮いている〜〜〜・・・・


慧はすごく気持ち良い感覚の中に包まれていた。

紅いベルベッドの布に包まれてすごく気持ちが良い。

意識は闇に沈む感じだったが、

それも悪い感じではなくて何かに守られている感じがする。


・・・気持ちいい・・・な・・・・


慧の意識は闇に溶けていきそうになった・・・。


そう・・・いきそうになった・・・・



次の瞬間。大音量の音楽が聞こえ、

慧はぱっちりと目を覚ました。


「な・・・なんなの・・・ぉ?」

それと一緒にバタンと蓋が開く。


音楽はさっきより大きくなった。

慧は起きあがると横の棺桶を見たが

どちらもぴったりと蓋が閉じている。



そして、向こう側の棺桶が3個開いており

1人の男と2人の女が音楽に合わせて

嬉しそうにダンスを踊っていた。


慧の視線に気づいた女がにこやかに

慧の方に駆け寄って来て慧を棺桶から引っ張り出した。



「ほら、あんたも踊る・・・。」

やはり、闇龍は女でも口数が少ないらしい。

「あっ・・踊り方知らない・・。」

慧は驚きのあまり、闇龍並みの口数の少なさで言った。



「坊主、俺教える。ここで踊るんだ。」

男が、自分の心臓を指しながらそう言いながら

ターンを決める。


・・・うわぁ・・無理だよ・・・


慧はそのダンスの動きにそう思った。

そのダンスは、ブレイクダンスのようなダンスで

男と女達がゆっくり踊って見せて慧にステップを教えた。

とにかく踊らなきゃと思った慧もおそるおそるステップを踏んだ。



「上手・・。」女がにっこり笑って

慧の手を握る。

気がつくと、もう1つの手も別の女に握られ

4人で円陣を組んでいた。


そのまま、ステップが変わる。

簡単なステップだと思ったが

段々曲が速くなっていく。


・・・・無理!!!絶対・・無理だから!!・・・・


そう言いたいのだが、がっちり両手を握られているので

そうも言えず、既に足はステップなんか踏まないで

ただ走っているばかりであった。



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