君と共に紡ぐ調べ

       第3章 過酷ナ3日間 −3−

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次の日の早朝、慧とロベルトとジャンは

もう一度パワースポットの滝の近くに行った。

3人はそこで頷きあうと静かに手を軽く合わせ

かつて黄龍が唱えていた大地を賞賛する詩を唱える。


すると、泉の中から黄色の光が集まり

3人はその光に包まれる。


同時に泉の中で聞こえてきた歌が3人を覆う。

慧がそのメロディに合わせ即興で歌を歌うと

大地が小刻みに振動する。

それは、心地の良い揺れで大地が喜んでいるような揺れだ。



紫龍の龍人でもある慧なのでその歌声は本当に素晴らしい。

森の動物達もその心地よい歌声に集まってくる。

ロベルトもジャンも慧の歌声に合わせて歌を歌うと

地の喜びが3人に伝わってきた。



本来、黄龍は歌を歌うと言う事はしない。

しかし、ロベルトもジャンもかつて紫龍のコンクールに出場した時に

歌の訓練も積んでいた。



その後も慧達や当主達と一緒に歌を歌ったり楽器を演奏しているので

今日もこうして慧に歌をあわせることができたのだ。

3人の歌声はナバラーン中の大地を駆け巡り、

大地はその歌声に歓喜した。






朝食が終わった後、眠ってしまった慧をロベルトが抱きあげて

近くの草原まで来た。

そこには、イアンとニコライの桜龍親子が待っていた

イアンはロベルトから慧を受け取ると

しっかり抱きしめて龍に変化した。

その後をニコライが追いかける。



桜龍は、慧が何年も住んでいた場所、セントミリュナンテに降り立った。

神官が何人も3人を迎えた。

イアンが龍から人型に戻っても慧が目覚める気配がない。

他の神官達も微笑ましそうに慧の顔を見つめた。



ニコライが優しく声をかけながら肩を揺すると慧は

ようやく目を覚ました。

「う〜〜〜ん。あっ。イアン。ニコライ。おはよう。」

慧はそう言いながらへら〜っと笑うと、イアンはそっと慧を降ろした。



「ケイ様、体調はだいじょうぶですか?」

ニコライが心配そうに言うと慧は笑って言った。

「大丈夫。ほら、昨日夜更かししたからね。

 それで、ここセントミリュナンテだよね。

 桜龍のパワースポットって?」


「ああ、私達桜龍のパワースポットは実はここセントミリュナンテなんですよ。

 ただし桜龍だけの為に行われるミサがあるのです。

 それが、私達桜龍のパワースポットなのです。

 そして、もう少しでそのミサが始まります。」

イアンはそう言って会堂に案内した。



そこには、多くの桜龍が待っていた。

慧は、その会堂横の控え室で薄い桜色の神官用のローブに着替えた。

ローブの上に金色の刺繍の入った帯をつける。

金色を纏うことのできる者は、

龍王と龍妃しかいない。



なので、ニコライの案内で会堂に入った慧は、

皆に深々とお辞儀をされ、特別な席に座らされた。

それからイアンが高位の神官と共に入ってきて

ミサが行われた。



それは、初代龍王から今上龍王並び妃への感謝の祈りと

これからのナバラーンの繁栄を祈っての真摯な式だった。



慧は途中から涙が止まらなくなっていた。


皆の平和や幸せへの願い。


それがとてもとてもありがたかったからだ。



慧も心の奥から祈った。


ナバラーンの者が幸せでありますように。


平和な世界を作ることができますように。



すると、祭壇の上に置かれていた桜色の石が

慧の方に飛んできて頭から体の中に入った。

それと同時に慧の右手から別の桜色の石が出てきて

祭壇の方へ飛んで行った。



慧は体が熱くなり頭の中にたくさんの人の

願いや祈りが浮かぶ。


その願いや祈りはどれも尊くて温かかった。




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