君と共に紡ぐ調べ

       第3章 過酷ナ3日間 −2−

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慧はロベルトの言葉を思い出して、

体の力を抜いた。



すると、ぬるっとした液体が慧を覆う。

遠くから歌が聞こえる。


『この泉は黄龍の中の黄龍の泉。

 黄龍の力を強める代わりに貰うのは

 あなたの記憶。

 それも、彼の方の為に・・・・。

 さあ、私に抱かれよ。』

すると、周りが黄色に輝く。




『おお、お待ちいたしておりました。

 彼の方。』

優しい歌声と共に慧の体は泉の下のほうに沈む。


泉の底に着くと、真ん中に黄色の宝石があり

そこから水が沸いていて泡がでていた。



慧がその石の方に手を翳すと、その石が慧の方に

吸い込まれ代わりに慧の中から黄色の石が出て

石のあった所にはまった。



それと同時に慧の頭の中には膨大な量の黄龍の記憶が

映画を見るように次から次へと浮かんだ。

その中にはロベルトやジャンが知らない黄龍の魔法も

含まれている。

慧は目を閉じ泉の流れに自分の身を任せて

その映像を堪能した。



そんな慧の体を黄色の光が今度は上へ上へと押し上げていった。





一方、その頃ロベルトとジャンは泉の浅瀬で目を覚ました。

2人はぬるっとした黄色の液体に包まれ

心地の良い歌と共に眠りにつき気がついたらこの浅瀬だった。

それでも、何だか気力がみなぎっているように感じる。


「あっ。ケ・・・ケイは?」

慌てて周りを見渡すジャンにロベルトは

「ケイは金の龍人だから、やはり何かがあるのかもしれない。

 実際、今この様子もいつもと違うんだ。」と言った。


「いつもと違う?」

「ああ。いつもは、この泉の水は黄色を帯びていないし

 かすかにだが歌声も聞こえない。」


確かに泉の水は黄色を帯びていて水の中で聞こえてきた歌声も

聞こえている。


「待つしかないんだね。」

「ああ。そうだな。」

2人は、泉からあがってバスローブを着た。


力がみなぎっているからか、あまり寒く感じない。


「ケイ、大丈夫かな?」

心配そうに言うジャンの肩をロベルトは叩いて言った。


「ケイは、ナバラーンに愛されているのだから

 大丈夫だ。」

2人は、慧がでてくるのをひたすら待った。




そして「うわぁ!!」と言う声とともに

慧が滝の上から滑り落ちてきた。


ジャンは、水をかき分けて慧の側まで行くと

「いったーい。」と慧はお尻を押さえて言った。


「大丈夫か?」ジャンは慧をひょいっと抱き上げて

聞いた。


「お尻・・いたーっい。」慧は顔を顰めて言った。

「あはははっ。そりゃそうだろう?あの滝の上から尻から滑り落ちると。」

ロベルトが爆笑しながらバスローブを渡しながら言うと

慧は「ひどいよ。ロベルト。」と言いながらバスローブを受け取り羽織った。



3人はそのまま部屋に戻り、食事を取った。

食後のお茶を飲んでいると、慧が口を開いた。


「ロベルトもジャンもどんな感じだったの?」

「ああ。ぬるぬるした液体に包まれて歌に囲まれた中で

 力を貰った。お陰で、今は力がみなぎっている感じがする。」

ジャンが言うとロベルトが口を挟んだ。



「つまり、慧は我々と違ったんだね。」

「そうだね。あの石は私の為に黄龍の記憶を

 覚えていたみたいだ。

 そして、その石は今私の体の中にあるんだ。」


「えっ?」

「うん。そして、黄龍の多くが魔法を使えない理由がわかったよ。」

「ケイ、教えてくれ。」ロベルトが身を乗り出して言った。



「元々、黄龍は大地の龍だったんだ。

 うーーんと、桜龍のような花と緑という意味じゃなくて

 その下の土と言ったほうがいいかな。

 それで、人や動物が活気がつくと地が喜ぶことを知っていた

 黄龍は、商売をやることにしたんだ。

 その当時の黄龍は地と一体になることに喜びを感じていたんだ。

 そして、ナバラーンの地はそのお礼に黄龍に地の産物である

 宝石や鉱石を見つける力を黄龍に与えた。

 しかし、長い年月が立つうちに地が喜ぶはずだった行為が

 宝石や鉱石が欲しいがための行為に変わってしまったんだ。

 それで、数代前の黄龍の当主は、危機感を持って

 自分の認める者以外の魔力を封じた。

 それが黄龍が魔力を使えない理由なんだ。」

「なるほど。」


「でも、ロベルト本当は、大地を清浄化し、祝福することは必要なことだったんだ。」

「そうなのか?」


「うん。だから、魔力を使える者にだけでも

 理由を伝え、魔法を教えて欲しいんだ。

 その代わり、宝石や鉱石を見つける力を私欲ではなく

 ナバラーンの為に使うことを考えて欲しい。」

「うーーん・・難しい話だが・・・何とか考えてみよう。

 とにかく、夜が明けたら私とジャンにその魔法を教えて欲しい。」



「わかったよ・・というより、失われた魔法もっとたくさんあるから

 寝ないで習得してね。」

「えっ?寝ないで?」ジャンが疲れたように言うと慧は微笑んで


「だって、力みなぎってるよね。じゃあ大丈夫。

 ほら、明日になると移動しなきゃいけないからね。」

と言った。



その後ろに慧に大きな影響を与えた蒼龍の

ある男の影を見た気がしてロベルトもジャンも

思わず小さく身震いをした。





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