君と共に紡ぐ調べ

       第3章 過酷ナ3日間 −1−

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「リュ・・・リューク、何?このスケジュール!!」

「ああ、時間が押してるから一気に4箇所周ってもらおうと思ってね。」


「いや・・ゆっくりできなさそうだよね。」

「そんなことないはずだよ。

 それと言うのも、黄龍と紫龍と桜龍と闇龍のパワースポットは

 たいした離れていないんだ。

 移動時間は龍で半刻くらいだからな。」


「えーーー。でも山に登ったりするのは大変だよ。」

「いや、そもそも黄龍の性格からして山に登るなんて考えられるか?

 三度の飯よりも金儲けが趣味なのに。」

「確かに。」慧は手を軽く叩きながら納得すると、

リュークは面白そうに眉をあげながら言った。


「それで、納得するのは笑えるけれどね。

 まあ、パワースポットめぐりが終わったら

 引越しだからね。」

「えっ!引越し。」驚いたように慧が言うとリュークが

頷いて言った。


「ああ。と言っても中庭に立つ聖離宮に移るんだけどね。

 大丈夫、皆一緒だよ。龍王様も我々も銀の龍も・・・。」

「そうなんだ。なら安心だね。じゃあ、早速部屋に戻って

 持っていく物でもまとめようかな?」

慧はそう言うと足早に自室の方へ向かった。







・・・・ここは何ですか?・・・・



慧は、溜息をつきながら思った。

「ケイ・・・大丈夫か?」

ジャンが心配そうに聞いた。


「だって・・・パワースポットって

 苦労して草を掻き分けて行くところでしょ?

 何これ?」

「なんだあ?その草をかきわけるって?

 どこの秘境だ?」

ロベルトは豪快に笑いながら言う。



3人は、今豪華なリゾート風ホテルの一室で

優雅に果実水を飲んでいた。

「黄龍のパワースポットはすっかり観光地化されているからね。

 でもね。この部屋は親父専用なんだ。」

「えーーーっ。そうなの。ロベルト?」



慧が驚いたように言うとロベルトはにやりと笑って言った。

「慧、黄龍は一部の龍を除いて

 魔力を持っていないんだ。

 なら、何でここに人は集まるかわかるか?」

「うーーん?癒し?」

「いや。ここに来ると色々な情報が得られる。というわけさ。

 それらの者の為の宿泊施設は、ほらここまで来る間に

 たくさんの宿を通りすぎたろう?」

「ああ、わかった。魔力に関係ないから他の龍や

 人間もいたんだね。」


「そう。そして、奥に位置するこの宿は

 本当に黄龍の魔力が必要なものだけのパワースポットなんだ。」


「へぇ。でも、紅龍の時みたいに、ここではパワーは感じないんだけど。」

「ああ。果実水を飲んだらそこの場所に行こう。」

「うん。」

慧は果実水を飲み干すと、裸にバスローブを羽織り、

ロベルトとジャンとテラスから庭の方へ降りた。



ジャンもパワースポットが初めてなようで

周りをきょときょと見回している。

庭の東屋を過ぎると急に纏う空気が変わり、慧の体が

金色に光を帯び始めた。



「慧、もう少しで着くからな。」

ロベルトはそう言うと、ザアっと言う水の音が聞こえ

滝が見えてきた。

滝全体が薄い黄色のオーラを出している。



「うわあ。綺麗だね。」

「ほんとだ。」

慧とジャンは大きな滝を見あげて言った。



ロベルトは上機嫌に笑いながらバスローブを脱いで、

水に足をつけて言った。

慧とジャンも近くの木にバスローブを掛けて

水に入った。



水は、ぬるくて心地が良い。

ロベルトについて進んでいくとロベルトが立ち止まって言った。

「ケイ、ジャン。身を任せるんだ。」

慧とジャンは何でロベルトがそう言ったのかわからなかった。



しかし、次の一歩を踏み出したとき、

水底から何かが足を掴みぐっと水底に引っ張られた。



「ケイ!!」



慧を心配するジャンの声があたりに響いた。

しかし、その次の瞬間3人の姿は水の中に消えた。




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