君と共に紡ぐ調べ

       第2章 紅イ宝石ヲ護る獣 −4−

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リンガー達は驚いて慧を見つめた。

紅色の宝石が白いリンガーの手を離れ

空に浮いた。


宝石は、そのまま慧の体の中に吸い込まれる。

それと同時に慧の体の中から八色の宝石が現れ

空を泳ぎ再び慧の体の中に入っていった。


同時に慧の体が金色の光で覆われ

リンガー達を取り囲んだ。


慧が光の中立ちあがり、白いリンガーの傍に来た。

「随分、長い間、頑張ったんだね。

 私が、あなたを元に戻してあげる。」

慧はそう言うと、リンガー達に手を翳した。


辺りが黄金色に光り、慧の頬が涙で濡れた。






「アル、あっちが光っている。飛び込むぞ。」

ガイは剣を取り出し、同じように剣を構えたアルと頷きあい、

その光の中に入っていった。


光の中に入ると慧が「ガイ。アル。」と小さく手を振った。

その周りには何人もの紅龍が倒れていた。

「何なんだ?これは。」

ガイは剣をしまって脱力したように言った。


「ケイ、大丈夫ですか?」アルは慧に駆け寄りながら言った。

慧は息を吸い込むと同時に金色の光は消えた。

「うん。ガイ、アル。話を聞いて。」

慧はそう言って2人を見あげた。



慧に事情を聞いたガイとアルはそこにテントを張り、

まだ気絶している紅龍達を寝かせた。

慧は、蒼の魔術を使い紅龍達を深く眠らせ

体力と気力の安定をはかった。



紅龍達は次の朝になりようやく目を覚ました。

白いリンガーだった紅龍以外の龍達も

今までのこと全てを思い出したようで

兄の紅龍の顔を見ると手を取り足元に泣き崩れた。



山を降り、紅龍の城に戻ろうと誘うガイに

紅龍達は黙って首を振った。

「私達は、この山で力を与えることに誇りを持ってきました。

 それが、私達の罪を償うことでした。

 だから、私達は終生、この山に居たいと思います。」

そう言う紅龍達にガイは口を閉ざした。



しかし、その中の1人が口を開いた。

「でも、兄さんだけはお連れください。」

紅龍にしては線の細い男は驚いたように立ちあがった。

「リュイ・・・・。僕も残りたい。」

「いや、キョウ兄さん。兄さんは俺達にとても良くしてくれた。

 だから、今度は俺達だけでこの山を守りたいんだ。」

リュイと呼ばれた男は晴れやかな顔をして言った。



ここで慧が口を開いた。

「もし、良かったらアルの補佐にどうかな?」

「えっ。」男が驚いたように言った。

アルも驚いたように目を見開く。



「私はね、闇龍の力も持っているから濁った玉がどれだけの時を経て

 澄んだものに生まれ変わるか知っているんだ。

 それを自分達の意思でできたということは素晴らしいことだよ。

 だから、その証拠に石の加護なんてなくてもこの森は

 力に溢れているんだ。」


「濁った玉?それは?」

「あの紅い石は、ここにいる皆の玉の本来の姿だった。

 でも玉自体に力があるからこそ、ここはパワースポットと呼ばれていたんだ。

 そして、私はあなたにナバラーンをより良い国にするのを手伝って欲しいんだ。」

慧がそう言うと少し考えさせて欲しいと男は言って立ち去った。







「それで、その紅龍は一緒に連れてきたのか?」

リューゼは慧の黒い髪に顔を埋めながら言った。

「うん。ここに来るときに決心をつけて一緒に来てもらったんだ。」

慧はリューゼに寄りかかりながら下から顔をみあげて微笑んだ。


「パワースポットもそのままか。」

「うん。俺が新たに石を作って渡してきたからね。

 ガイがあの山を紅龍専用の精神修行の場にすると張り切っていたよ。」

「そうか。それは良かった。おかえり慧。」


リューゼがぎゅっと後ろから慧を抱きしめた。

「ふふふっ。ただいま。リューゼ。」

慧がそう言いながらリューゼにキスをした。


「龍王様・・龍妃様、もう少しで晩餐なので早く湯殿からおあがりください。」

時間に追われてるであろうテリオの少し情けない声が

脱衣所の方から聞こえた。



2人は顔を見合わせて笑いあいながら、もう1度キスを交わした。




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