君と共に紡ぐ調べ

       第2章 紅イ宝石ヲ護る獣 −3−

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『どうしたのです。』

洞窟の奥から凛とした声が聞こえた。

『紅龍の土地なのに紅龍で無い者がいたので

 捕らえて参りました。』

獣は、慧をどさっと降ろした。



『ああ、この方は・・。』

白い熊のような獣リンガーは慧を抱えあげた。

『・・・私が・・・。』

先ほどのリンガーは慌てて言った。


『この方は、私達の母なる方です。

 美しい方ですね。』

白いリンガーは慧を愛しそうに撫でた。


『龍妃様・・・・。』驚いたように

先ほどのリンガーが言った。



「うーーん・・・ふわふわ〜〜。」

慧が白いリンガーの毛皮に顔を埋めながらそう寝言を言った。

『かわいらしい方ですね。』

白いリンガーは慧を軽く抱きしめて目を閉じた。




慧は夢を見ていた。

広い草原に紅龍の男が数人いて

人間を甚振っていた。


「やめて下さい。お金を差し上げるので・・・。」

「金?金なんていらない。欲しいのはおまえの命だ。」

紅龍の男は笑いながらそう言った。


男は、剣を振りあげ振り落とそうとした時、

まだ若い紅龍が人間を庇って剣の前に飛び出て、

そのまま切られた。

「兄さん!!」

剣を振りあげた男は呆然としたように剣を落とした。



その時、紅い風と共に大柄の紅龍が舞い降りた。

紅龍は人型になるとそこにいた全ての紅龍をなぎ払い

気絶させ倒れている紅龍を抱き起こした。


「まだ、大丈夫だ。私が力を・・・。」

怪我を負った紅龍は静かに言った。


「弟達は・・・?」

「罪を背負った者には罰を与えねばならない。

 相手が兄ならなおさら・・・。」


「お父様・・・まだナバラーンにはお父様の力がいる。

 私に力を使ってはなりません。」

「しかし・・このままなら死ぬぞ。」


「お父様・・・その代わり弟達を許してあげてください。」

「ならぬ。」


「なら、立ち直る・・・機会を与えてください。

 お願い・・・・。」


その時、金色の光とともに黒い髪の男が現れた。

「すまない。話を聞かせてもらった。

 お前の命を救い、この者達の罪を許してあげるほどの

 力は私達にはない。

 だからと言って、この者達の罪を許してあげるだけということも

 できない。しかし、もし、お前に覚悟があるなら

 私に考えがある。」


「覚悟・・・?」

「ああ。我々が亡くなった後もこの紅い宝石を護り

 この地を清浄に保っていれるのであれば

 いつか、やり直す機会があるだろう。」


「それなら・・・。」

「いや・・話は最後まで聞け。

 お前達全ては紅龍ではいられない。

 獣になるのだ。

 そして、気の遠くなるような時を過ごし、

 心を入れ替えるのであれば、もう1度やりなおせるだろう。」



男は痛みに顔を歪めながら言った。

「お願いします。どうかそうして下さい。」

「わかった。」

その場所が金色の光に包まれた。


そして、男が気がついた場所は山の中で


男の前には先ほどの黒髪の男が立っていた。


そして、男の周りには茶色のリンガーが転がっていた。

黒髪の男は、紅い宝石を差し出して言った。


「このリンガーはお前の弟だ。

 そして、以前の記憶があるのはお前だけだ。

 この宝石を護りそしてこの山を清浄にしなさい。


 この山に入れるのは紅龍のみ。

 そして、この紅い宝石は正しい目的でこの森に入った

 紅龍に力を少しだけ分ける。


 お前は、紅龍を見分け力を渡せるものに力を分けるのだ。

 そして、その紅龍がその力で正しい行いをした分だけ

 その宝石は大きくなる。」


宝石を受け取る手を見ると男も白い毛皮に覆われていた。




それから、気の遠くなるような長い時が始まった。

白いリンガーは、気がついた茶色のリンガーをまとめ、

森に入る紅龍達をある時は導き、ある時は遠ざけた。



そして、小指の先くらいの宝石は、段々大きくなり

拳くらいになった。



しかし、数百年前からこの森に紅龍が入ってこなくなった。

石は段々小さくなってきた。

この石が無くなると自分達もどうなるかわからない。

リンガー達はそんな思いでいっぱいになっていた。





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