君と共に紡ぐ調べ

       第2章 紅イ宝石ヲ護る獣 −2−

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「慧、疲れていないか?」

ガイが心配そうに聞く。


「疲れるわけないよぉ。

 疲れるとしたら、アルだよ。大丈夫?」

慧はアルの顔を見あげながら言った。



「大丈夫だ。生半可な体の鍛え方をしていないからな。」

アルは片腕に抱いている慧に微笑みながら言った。

朝、テントを張っているところから

パワースポットと呼ばれる、山の頂上を目指して

歩き出したが山道が険しくて息があがるのでアルが片手で

抱いてくれた。ちなみに背中にも大きな荷物を背負っている。



それでも、息ひとつ切らすことなく、早足で歩いている。

「ねえ。紅龍のパワースポットってどんなところ?」

慧が不思議そうに言うとガイが鼻の頭をポリポリ掻きながら言った。


「いやぁ。実は俺も行ったことないんだよ。

 ほら、以前の俺はそういう他力本願を排除していただろう?

 それは、前当主から引き継がれたことだから、

 ここにはずっと紅龍は来ていないと思うんだ。」

「ああ、だから道が悪いんだ。」

慧は納得したように言った。


足元は獣道のような道だけが続いている。

「伝説では、紅の宝石を護る獣がいるそうだ。」

「紅の宝石?」

「ああ、何せ紅龍は蒼龍のように何でも本にするような

 まめさがあるわけでないからな。」

ガイがそう言いながら、草を掻き分けて前に進んだ。





その夜、テントの中で慧は奇妙な声を聞いた。

『この山に入るものは、もう数百年ぶり・・・。

 紅の宝石をとりに来たのか。

 来たなら戻れ。』

慧は起きあがってテントの外に出てみると

濃い霧が立ち込めている。

いつもなら気配に聡いガイもアルも眠っているようだ。

「誰・・・?」

慧は気配のある方へ静かに歩いていった。

『偽りの君は紅龍の気配が薄い。』

そう声がすると同時に慧は獣の腕に抱かれるのを感じた。

・・・・リューゼ・・・・

慧の頭をとっさによぎったのは愛しいリューゼの姿だった。





「慧!!」

執務室でリューゼはペンを置いて顔をあげた。

夜の遅い時間なので部屋には誰もいない。

リューゼは窓からテラスにでると

心配そうに慧のいる方向を見て

そっと目を閉じた。

目には愛しい慧が獣の腕に抱かれて気絶しているのが見える。

「慧・・・大丈夫だ。ナバラーンの生き物は母を傷つけはしない。」

リューゼはそう言うと手を目の前に差し出し

フウ〜〜ッと息を吐き出した。

その息は金色の粉になり慧のいる空へと消えていった。

「慧・・早くわが胸に戻っておいで。

 慧を抱けないのは苦しいが、そばに慧がいないことは

 もっと辛い。」

リューゼは小さくそう呟いた。





ガイとアルは同時に目を覚ました。

不思議と急に眠くなり寝入ってしまったのだ。

慧が眠っていた方をアルが見てがばっと立上がった。

「ケ・・・イ?ケイ。」

アルはテントの外にでてテントの周りを

走って慧を探した。


ガイは目を閉じて慧の気配を探っていたが

近くにいなそうなので、テントや荷物をまとめはじめた。

「だめだ。いない。」


肩を落としたアルにガイが激を飛ばす。

「気をおとしている暇はないぞ。

 荷物を担いで、パワースポットに向かうぞ。」

ガイはそう言いながら荷物を背負う。

アルもはっとした顔をして荷物を背負った。



その時、金色の光が飛んで来て道を作る。

「リュー、ありがとな。アル・・この光を追うとケイのところに行けるぞ。」

アルは不思議な顔をして光を見つめた。

「本当に・・・?・・・で・・リューって誰?」

「ああ、頼もしい俺の弟で尊敬すべき我らが龍王さっ。追うぞ。」

2人の紅龍の男は目を見合わせて頷きあうと猛スピードでその光を

追い始めた。




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