君と共に紡ぐ調べ

       第1章 君ト紡グ日常 −5−

本文へジャンプ




数日後、城の一部屋にリューゼ、慧、当主達、銀の龍達が集まっていた。



「龍王様、今日は大切なお話があるのです。」

蒼の当主リュークが話をし始めた。



「リューク、何かな?」リューゼは穏やかに聞いた。

「ご成婚が終わりました、今、気になるのは跡継ぎの話になります。」

「私は、まだそんなに急がなくても良いと思うが・・・。」

「ええ。確かに龍妃様が慣れるまで、待ってもよろしいのですが、

 問題はそのような事ではありません。」



「何が問題だね?」

「それは、龍妃様のお体の問題です。

 龍妃様は、以前、ナバラーンの海を清めるために長いこと

 海中に留まり眠っておりました。

 本来的には成長期にあたるその時期に数ヶ月も海中にいたことや

 その他にも色々な無茶を重ね、倒れることが多かったので

 体の成長が追いついていないのです。

 龍王様も気付いておられるでしょう?」


「ああ。確かに、毎日妃を抱くのは可愛そうだとさすがに思う。」

「しかしながら、子をなそうとお考えになった時には、

 毎日性交を行わねばならなくなります。」




「リュ・・・リューク。」慧はそのあからさまな口調に

真っ赤になりながら俯いた。

「龍妃様、子をなす事は、本当に大変なことなのですよ。

 今は詳しくは申しあげませんが、

 次期龍王並びに次期当主をなす事は、

 龍王様と龍妃様だけの話ではなく、

 当主、銀の龍皆が協力しなければならないことなのです。」



「ケイ様、蒼の龍の術として習った出産知識とは、

 まったく別のものだと認識して良いと思います。

 でも、その前にケイ様の体調を万全にしなければならないのです。」

ファルが慧を諭すように言った。



「わかりました。具体的にどのように?」慧が聞くとリュークが口を開いた。

「まず、龍王様、我々が許可するまで性交はなさらないでください。」

「ああ。慧の為だ。100年待てたのだから何とか抑えよう。

 慧、あまり私を煽らないでくれ。」

「煽る・・・?」慧は眉をあげて上目遣いにリューゼを見つめた。

その目が十分煽っているように見えるのだが、気づかないのは本人だけみたいだ。

リューゼは肩をすくめて小さな溜息をついた。




「話は戻りますが、ケイ様は毎日、体を強くする薬湯をお飲みください。

 それから、スケジュールを調整して、ナバラーンのパワースポットを

 巡ってみるのも良いと存じます。」


「パワースポット?」



「ええ。ナバラーンには龍の種類ごとにそれぞれの龍の魔力を調整し

 体力を向上させてくれるパワースポットと呼ばれる地があります。

 そこの場所は、それぞれの龍でなくては行くことが出来ないのです。

 幸いケイ様は、全ての龍の加護がついているので行かれるとよいと思います。

 ただ・・・。」



「何か懸念があるのか?」リューゼが言うとガイが口を挟んだ。

「ああ。パワースポットの外までは警護できるのだがそこに入れる龍が

 限られてくると警備上の問題出てくるのです。

 警備の長として考えると、そこにいる者全てを一旦退去させ

 貸しきる方がありがたいのですが・・・。」



「そのパワースポットって一般の人も行くの?」

慧が聞くとリュークが答えた。

「ええ、そのパワースポットには各龍を守ってくれる精霊がいると言う伝説があり、

 空を飛んでその地に行くのは忌み嫌われているので、皆人型で歩いて訪れるのですよ。」

慧はちょっと考えてリューゼに言った。



「リューゼ、私の今の立場は良くわかっているから、

 ここからずっとというわけにはいかないと思うけれど、

 そのパワースポットに入るときは変装して、銀の龍と一緒に行って良い?」



「ケイ様、銀の龍だけでは護衛というわけにはいかないので、

 行くときは、我ら当主も一緒しますよ。

 我々もパワースポットの恩恵に預かれますからね。」

ロベルトがそう言うと、他の当主達も頷いた。



リューゼは、しばらく考えていたが顔をあげて言った。

「わかった。気をつけて行っておいで。

 金の龍にもパワースポットがあるから

 その時は一緒に行こう。ガイ、そういう事で頼む。」



こうして、公務の合間をぬって、慧はナバラーンのパワースポットめぐりに

出かけることになった。





INDEX BACK NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.