君と共に紡ぐ調べ

       第1章 君ト紡グ日常 −3−

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「うう・・・ん。」


慧は顔に光が当たるのを感じて目を覚ました。



顔の上に金色の髪がかかっている。

リューゼが自分を抱きしめて眠っていた。

「ふふふっ。」



慧はそう言いながらぎゅっとリューゼに抱きつくと

リューゼはクスクス笑って慧を抱きしめるとキスをする。


「あっ。リューゼ。起きていたんだ。う・・・ん。」

慧はそう言いながらリューゼの舌に翻弄される。



「名残惜しいが・・時間だな。」

リューゼはそう言うと慧の額にキスを落として起きあがった。



慧も起きあがってガウンを着る。



2人は、どちらからともなくキスをすると、リューゼはゆっくりと

寝室のドアを開けた。






「本当にプライベートな空間って寝室だけなんだね。」

慧は書類にサインをしながら言った。


「そのようだな。拝見していて妃にならなくて良かった

 と心の底から思うよ。」

慧の側で書類の整理をしていた男が言った。


「ユナ・・・。風当たり強いだろうが頼むね。」

慧が言うとユナは首を振って言った。

「いいえ。私の方こそ、こうしてそばに置いていただいて

 ありがたいと思う。」



元々、ユナは、貴族の親に龍王の妻となるべく育てられていた。

その時の自分を思うとユナは恥ずかしい気持ちになるくらい

傲慢で我侭だった。

しかし、慧が龍王の妻になることを知った親が

他の貴族にユナを売ろうとしたことを知り

絶望して自殺を図ったところを慧に救われた。



宮殿を去ろうと考えていたユナを引き止めたのは慧だった。

まだ父親が捕まらないうちに慧の従僕のエドワードと養子縁組をすませ、

城に残り、今は人の城の慧の補佐として働いている。



そうは言っても、やはりユナに対しての風当たりは強い。

しかし、小さな時から培われていた妃教育の成果が結果的に

慧の役に立っており、養父であるエドワードも

ユナの後ろ盾になってくれているのでこうしていれるのだ。



「本当に助かっているんだよ。仕事が捗るのは

 人の城の雑務をこなしてくれるユナのお陰だもん。」

そう言いながら、サインを続けている慧を見て

ユナは嬉しそうに微笑んで言った。


「さあ、頑張ってサインしてね。

 その書類終わったら、おやつ食べよう。」



「おーーっ。頑張る。」

慧はそう言いながらひたすら書類を読みながらサインをした。





終わった頃、蒼龍の男と黄龍の男が入ってきた。

「あっ。サフォーク・ダリオ。お疲れ様。」

「龍妃様、龍の城の方の書類です。」


サフォークと呼ばれた男が書類を差し出した。

「あっ。やっぱり龍の城の方が少ないね。

 もうちょっと頑張る。」


「終わりましたら、サイシュン様お手製のケーキお持ちしたので

 いかがですか。」

ダリオと呼ばれた男がそう言って微笑んだ。

「うん。お茶用意してくれる間に目を通すよ。」

慧はそう言いながら羽ペンを取り出すと再び書類に目を通しだした。



さっきまでユナが立っていた場所にサフォークが立ち、

ダリオとユナは一緒にお茶の準備を始めた。

お茶の準備が整う頃、慧もペンを置いた。



「お疲れ様です。ケイ様。」

サフォークは書類の束を揃えながら言った。

「うん。それじゃあ、恒例のミーティング始めようか?」

慧はそう言いながら机から立った。



サフォーク、ダリオ、ユナは、慧の補佐として働いている。

なので、午前のこの時間はミーティングを兼ねて

茶を飲むことが恒例となっていた。



龍王の花嫁になった時、慧は自分の仕事はあまり無いか

龍王の補佐くらいだと思っていた。


しかし、ある意味、龍妃は龍王より忙しい存在であった。

龍王は神と同じ存在である為に

公式行事にはあまり呼ばれない。


その代わりに呼ばれるのが、龍妃である慧である。

そして、政に関して小さなお願いは妃である慧宛てに

嘆願書が届くので、それにも目を通さなければならない。

嘆願書の内容を慧が許可すると

それに対して具体的に動くように企画をしたり、

命令を下さなければならない。



補佐の3人が協力して、慧のスケジュールを決め

書類なども整理しているのだった。



そうは、言っても慧自身、ほのぼのした雰囲気の持ち主なので

なんとなくほんわかした雰囲気の中で

お茶を飲むのが日常となっていた。




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