君と共に紡ぐ調べ

       第1章 君ト紡グ日常 −1−

本文へジャンプ




昼下がりの街角に小さなオープンカフェがある。

そこに男・・いや16歳くらいの若い男が座っていた。


冷たいお茶を飲みながらぼーっとしている。

茶色の髪に茶色の目で、ここ人の街でも普通の容姿なのに

彼は何かが違って見える。



「久しぶりに街に出たんだけど、まさかこうだとは・・・。」

男は独り言を言った。

その時、女の店員の声が聞こえた。

「ねえ、あの男の人。可愛いよね。」

「うん・・うん・・・。ほら、龍妃様みたいに華奢だよね。」



男はその話し声を聞くと席を立った。

その時、息を切った少年が男に近づいて来た。

「ケ・・・ケイ様・・・。ここにおられたのですか?」

「う・・・ん。テリオ、今日は城に帰るよ。」

ケイと呼ばれた男は疲れたようにそう言って、テリオと歩き出した。



テリオは心配そうな顔をして慧に着いていく。

城門の近くに来ると慧は「中で待っている。」と言って

姿を消した。



テリオは通行証を門番に見せ、城門の中に入った。

少し歩いたところで、慧が立っていた。

いつの間にか、髪と目が黒くなっている。



「テリオ、悪いけれど私は部屋で休んでいるよ。」

慧は、元気無さそうに自分の部屋の方へ歩いて行った。

テリオは心配そうにおろおろとその後姿を目で追った。






同じ頃、城の一室で8人の男が茶を飲んで寛いでいた。

ここでこの8人の紹介をしよう。

蒼い髪に蒼い目の男は、ファル。

蒼龍の男で、知的な雰囲気が漂っている。

いつも微笑みを絶やさないが腹の中では何を考えているのか

わからない男である。



紅い髪に紅い目の男は、アル。

紅龍の男で、目つきや体つきは戦士のようだ。

騎士道精神に溢れ、刀を振るう姿は勇猛な男である。



紺色の髪に紺色の目の男は、ジーク。

闇龍の男で、この男もがっしりとしている。

無口であまり話さないが、とても優しい男である。



黄色かかった茶髪に琥珀色の目の男はジャン。

黄龍の男で、脱げばすごいぞタイプ。

爽やかな兄貴タイプの男である。



白銀色の髪に銀蒼色の目の男はサイシュン。

常に冷静な白龍の男で、すらっとした体型をしている。

料理が趣味な器用な男である。



桜色の髪にピンクの目の男はニコライ。

龍になる者が少ない中で龍になった桜龍の男で、痩せ型である。

敬語が身にしみているようで、とても親切な男である。



水色の髪に翠色の目の男はアハド。

翠龍の男で、日焼けして肌にがっしり型の海の男である。

仲間を大切にして頼れる男である。



薄紫の髪に菫色の目の男はルイ。

紫龍の男であり、体型は華奢である。

とても心が優しい男で、いつも周りを気にかけている。



この男達、なぜ一緒に茶を飲んでいると言えば、

彼らが銀の龍だからである。


龍王の大地。ナバラーン。

ナバラーンには、多くの龍族と人が暮らしている。

それを治めているのが龍王と重鎮である金の龍とも言われる各龍の当主達である。


そして、龍王の隣に立つのが龍王の妃であり、

それを守り、支えるのが銀の龍である。


当主達は、家族を持ちそれぞれの国を持つので

龍王とずっと共にいるわけではない。

しかし、銀の龍は伴侶を持たず、龍妃と共に在る。

そして、現龍妃である慧は、皆で一緒にお茶を飲むことを習慣にしているので

今日もこうして8人は一緒にお茶を飲んでいるのだった。



「今日、ケイは来ないと思うよ。」

「どうかしたのか?ジャン?」ジークが心配そうに言った。


「どうせ、1人で抜け出して街にでもでたのですね。」

慧の行動を見ていたようにファルが言いながら茶を飲む。


「また、危険なことを、ケイ様は大丈夫だったのですか?」


「うん、ニコライ。その辺は抜かりないよ。

 鏡でも見ていたし、アルにもすぐ連絡したから。」ジャンはアルを見ながら言った。


「ああ、連絡を受けて護衛をさりげなくつける手配したぞ。」


「でも、もう、城に戻っているんだよね。何でケイ来ないの?」

不思議そうにルイが言うと聞いていたアハドも頷きながら言った。


「いつもは、茶菓子など買って楽しそうに来るんだがな。」


「具合でも悪いのか?」サイシュンも心配そうに言った。


「違う違うって。今日は街中にあれが溢れていたから恥ずかしかったと思うよ。」

ジャンが笑いながら言った。



皆が納得したように頷いた。

「まっ。今のケイを慰めるのはあの方しかおりませんね。」

ファルは微笑みながらそう言って懐から小さな絵を出した。


「あっ。私も持っていますよ。」ニコライが言うと、

他の銀の龍もそれぞれ小さな絵を取り出した。

皆は顔を見合わせて笑いながら、その小さな絵の鑑賞会を始めた。



INDEX BACK NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.