眠る君へ捧げる調べ

       第11章 エピローグ 

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「ケイ様、お綺麗ですよ。」

「メリッサ、綺麗というのは男に対する褒め言葉じゃないよ。」

慧は顔を顰めながらそう言った。


「ケイ様、あきらめも肝心ですよ。

 それに、今日が終われば龍王様と共にいれますよ。」

「うん、結局式の準備に追われてほとんど会えなかったからね。」

慧は残念そうに言った。



扉が開いてエドワードが入って来た。

エドワードも今日は髪を油で整えている。

「ケイ様、お迎えに参りました。

 とても、お美しい。

 そして、本日はおめでとうございます。」

「ありがとう。」

慧がそう言って、エドワードの案内で人の城の玄関ホールに行った。




そこには、礼服を着た貴族達が拍手で慧を迎えた。

ユーリが近づいて来て言った。

「ケイ様、本日はおめでとうございます。

 それで、ケイ様にお願いがあるのです。」

「なに?」

「ナバラーンでは、花嫁が花婿の元に行った道を遮るのは不吉とされております。

 それが、ケイ様なら尚のこと。

 なので、馬車を用意いたしましたので人の地区から龍の地区へそして城へと

 お渡りいただけるでしょうか?」

「つまり通った後は門は閉ざされないということ?」

「はい。」

「わかりました。」

慧がそう言うとユーリは

「ありがとうございます。どうか、お幸せに。」と言いながら微笑み、

人の城の玄関の扉を大きく開けた。




ここから、式がはじまるのだ。



扉の向こうには銀の龍達が跪いていた。

皆、それぞれの龍の色の服を着て白銀色のマントを羽織っている。


慧はその前に立ち静かに言った。

「共に行こう。」

銀の龍達はその言葉に大きく礼をすると慧を真ん中に囲むと

再び跪いた。


『銀の龍は、貴方様の龍。

 龍王の理を抜け全ては貴方の為に。

 龍王と当主の絆は血。

 しかし、我等銀の龍の絆は心の鎖。

 常に貴方と共にあり、

 貴方の為にこの身を捧げると誓う。』



慧が馬車に乗ると、銀の龍達はそれぞれ馬に乗り慧の馬車の周りを囲んだ。

人の街の沿道や龍の街の沿道には沢山の人々が溢れ

口々にお祝いの言葉をかけ、花束を馬車に投げ入れた。



龍王の城の前に行くと当主達が待っていた。

銀の龍達は馬車が止まると馬から降り馬車の横で整列した。

リュークが慧が馬車から降りるのを手伝い、

慧の後ろに並んだ。



神官の後ろを慧がしずしずと歩く。

その後ろを当主と銀の龍が歩く。




ナバラーンで龍王は神と敬われている。

その神が結婚は、初代龍王の化身とされている太陽と

初代龍王の妃の化身とされている月に祝福を受けるという意味で

儀式用に整えられた庭園で行われる。



朝早いこともあって、空には昇りそうな太陽と

沈みそうな月がでていた。

儀式用の庭園は、階段状になっており奥が高くなっていて

そこには、リューゼが待っていた。




慧は、階段を昇りながら白い服に身を包んだリューゼの

凛々しい姿に見惚れた。



階段を昇りリューゼより一段低い所で慧は跪いた。

そのもう一段低いところに当主達と銀の龍達が跪く。

リューゼが近づいてきて言った。



「我の傍にあると誓えるか。」

「はい。私は、今までもこれからも貴方の傍にあります。」

慧がそう言うと、リューゼは慧を立ちあがらせ抱きあげて

自分の隣に立たせ大きな声で宣言した。



「この者。我の隣に座すもの。

 我の唯一の伴侶。

 我はこの者の一部であり、

 この者は我の一部である。

 ゆえに我もこの者もナバラーンの大地であり

 空であり海である。

 初代龍王・そしてその妃よ。

 我らとこのナバラーンの地に祝福を与えん。」




すると空から無数の金の光が降り、

リューゼと慧を包んだ。


『我は初代龍王、汝ら我と我の妃の力を継承する者と認める。』

と言う声が天から聞こえた。



慧は、思わず儀式の最中であるのを忘れ、

「リュート。タカ。」と言うと耳元で「幸せに。」という声が聞こえ

抱きしめられたような気がして、体中に力が入ってくるような

感覚がした。




光がやむとリューゼは慧の肩を抱き寄せて優しくキスをした。

皆の拍手とナバラーンの歌が聞こえる。



慧は伸びあがってリューゼの耳に囁いた。

「リューゼ、愛しているよ。ずっと一緒だよ。」

そう言った慧はすごく綺麗に微笑んでいて

とてもとても幸せな顔をしていた。




FIN


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