眠る君へ捧げる調べ

       プロローグ

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『そろそろ我が花嫁を見つけようと思う。』

『はい。龍王様。』

『それでは、我は100年の眠りにつく。』

『かしこまりました。どうかお健やかに。』

『全てを貴方と時を共にする我ら龍の当主にお任せください。』

『頼むぞ。』







「お母さん、龍王様のお話聞かせて。」

男の子がベッドに入って大きな眼を輝かせて言った。

母親は優しく男の子の髪をなでて言う。

「はい。はい。

 昔々、龍の王様がおりました。

 王様には腹心の龍と多くの召使が仕えておりました。

 でも、王様はいつも1人でした。

 そこで、王様は自分の花嫁を探そうと決意しました。

 自分が愛し愛される花嫁を。

 そこで王様は永き眠りにつきました。

 そして別の世界に自分の愛する人を探しに出かけました。

 王様は腹心の龍にある頼みごとをしました。

 龍はその頼みごとに従って、

 王様が眠ってから99年目にその世界全体に

 おふれを出しました。

『王に全てを差し出し、王の全てを貰いたい者は

 王の城に集まるように。』

 それを聞き、王の城に集まった人はたくさんいました。

 その人達にお付きの龍は王の寝室の場所を教えました。

 しかし、王の寝室に入れたのは数人でした。

 その人達は王様にキスをするように言われました。

 1人がキスをするとその人は床に倒れました。

 その人は王様の財産だけが目当てだったのです。

 そして最後の1人が王様にキスをすると、

 王様は目覚め、その人を抱きしめました。

 王様とその人は結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

 めでたし。めでたし。」


母親は眠っている小さな男の子にキスを落とすと

部屋の灯りを消した。



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