君と僕らの三重奏シリーズ WEB拍手お礼編
  
  
   生涯を誓ったピアス
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「今どき、執事やメイドなんて古臭いわ。

 あの屋敷を閉鎖、解雇します。」

屋敷の主が不在になった今、その主の後妻だった

ブロンド美人はそう言い放った。

ザワザワする中、ジーンは必死で言った。


「奥様・・・せめて、私はエドワード様のそばにいさせてください。」

ジーンの隣にいた、ジーンの兄ハリーも同じことを言う。

この2人は、マクスウェル家に仕えてきた執事の一族で、

死んだ当主からエドワードの事を頼まれていたのだった。


「そうね。あの子の面倒があったのね。

 まあ、あの子には精々長く生きてもらわなければいけないわ。

 社長の地位に私がついた今、秘書はもういらないわ。

 あの子の面倒を2人で見ればいいわ。

 あと、この屋敷の管理も一応してね。

 あの子が成人にならないと売れないから。」

女はそう言い捨てて屋敷を出て行った。


「ハリー、門の合鍵を貰えないか?

 俺は、ここの庭で働かせてもらっていたけれど

 この庭が好きなんだ。だから休日にでも

 庭を弄りに来たいのだが・・・。」

庭師がおずおずとハリーに言った。

「私も先の奥様が愛した居間にたまには風をいれてやりたいの。

 だから、休日に開けてもらえると来れるんだけど。」

そうメイドの何人かが言った。

ハリーは皆にお礼を言ってその好意に甘えることにした。




「ジーン。取りあえずはこのくらいで良いか?」

その週末ハリーはエドワードが入院している病院の近くに建っている

マンションの中で言った。

「ああ、後はエド様がこちらに移り次第、必要な物は揃えて行くさ。」

「すまないな。私も一緒に住みたいのだが・・・。」

ハリーは申し訳無さそうに言った。


「いや、兄さんの所だってこの前、ダニーが生まれたばかりじゃないか?

 エドワード様のお世話は任せてくれ。」

「エド様の容態は?」

「本当は、手術が必要なそうだが、元々体が弱いので手術に耐える体力がないそうだ。

 それに手術は体中を知り尽くした名医でないと難しいそうだ。

 エド様は、旦那様が亡くなった今、気落ちなさっているようなので、

 まずは体力をつけることが必要だそうだ。」

「そうか・・・。あの女は余計な治療費をかけるなと言った。

 旦那様が秘密に我々に預けた口座が無ければ・・今頃・・・。」

ハリーは、苦しそうに言った。

「ああ。あの雌狐は旦那様の遺言が無ければエド様を見捨ていたろう。」

「旦那様は、何であんな遺言を・・・。エド様には遺言の話は?」

「まだ、話していない。エド様をがっかりはさせたくない。

 ひょっとしたら、エド様に血の繋がった姉がいるかもしれないと喜ばせてから

 もし、違ったら落胆なさるだろう。」

「私が主体で調査するので、お前はエド様を・・・。」

「ありがとう。ハリー。」

ジーンはそう言うと、窓から空を眺めて言った。

「今日も泣きそうな空をしているな・・・。」








誰よりも大好きだった父様が亡くなった。

これで・・・僕は1人だ。



エドワードは病室の外に広がる空を見つめて思った。

エドワードは小さな時から病弱だった。

いつも傍にいてくれたのは、ハリーやジーンなどの執事一家と

優しいメイド達だった。



それでも、母親は使用人の子と遊ぶことは禁じた。

エドワードに愛情を持って接してくれたのは父であった。

父は忙しいビジネスマンだったが、いつもエドワードを気にして

見舞いに来てくれた。



南の穏やかな気候が体に良いと聞くと体調の良いときを見計らって

バカンスに連れて行ってくれた。

その時の父はとても優しくて頼もしかった。



2年前に父は今までの屋敷でのホームドクターの治療を改め、

ロンドンでも有名な私立病院に転院した。

すると、以前まで酷かった症状が改善され、

屋敷に帰れる日もぐんと増えた。



屋敷に帰る日は、父がずっと傍にいて色々な話をしてくれたり、

出張先の外国での話をしてくれた。

体力をつけ、手術が成功すると

外国にもいけるようになるから、

一緒に行こうと父は微笑みながら言ってくれた。

ある日から、父の顔色は段々悪くなっていったように思った。

心配したエドワードに父はいつも笑って大丈夫と言ってくれた。

でも、結局父は亡くなってしまった。




一方、母はエドワードに触れることはほとんど無かった。

熱が出て苦しい夜も、キラキラしたパーティドレスを着て

まるで自分を汚い者を見るような顔をして出かけて行った。

皆は隠しているが、母がボディーガードのエリックと

浮気をしているのをエドワードは知っていた。



実際、入退院を繰り返すようになっても

母が病院に来てくれたことはない。

退院して父と共にいる時だけ母は表面上は優しくしてくれたが

父がいなくなると「さっさと自分の部屋に行きなさい。」と邪険にした。

そして、ここ一年は屋敷で母の姿を見ることは無くなった。




「もう、僕なんていなくても誰も困らないのに・・・。」

エドワードがそう呟くと「そんなことないですよ。」という声が

入り口の方からした。

見ると、逞しい体にブラウンの髪の男が立っていた。

「ジーン・・・。」

エドワードはそう呟いた。

誰かが自分を迎えに来るなんて思っていなかったからだ。


「エド様、迎えに参りました。」

ジーンは恭しく礼をしながら言った。

「ジーン・・・どうして?」

マクスウェル家の執事と言えば代々ハリスフォード家が取り仕切っている。

数年前、心臓発作で先代の執事が亡くなってから

息子である30歳のハリーが後を継いだ。



ハリーは、大学を卒業してから亡き父の秘書をして何かと雑用をこなして来たので、

苦労はしていたがそつなく仕事をこなしていたように思う。

父は、その弟のジーンも大学の学費を出して目をかけていたので、

数年前、大学に入学すると挨拶をしてから一回も会うことができなかったのだった。

久しぶりに会ったジーンは背が伸び、ブラウンの髪を丁寧に整え

スーツが似合う大人の男になっていた。

それでも、優しいグレイの目は相変わらずで、エドワードはその姿を見て思わず

涙を零した。



「ああ、エド様。泣かないで下さい。

 それに自分がいらないなんておっしゃらないで下さい。」

一般の11歳なら、外で友達と遊んでいる頃だろう。

でも、目の前のエドワードはずっと幼く見える。

父親の葬儀にもようやく参列し、葬儀が終わると付き添いの医師の指示で

そのまま病院に向かい入院した。

ようやく精神的に安定したのでこうして迎えに来れたのだった。

「まさか、ジーンが来てくれるなんて。」

この少年は賢く、母親に疎まれていることを知っている。

医師は気丈に振舞っているとは言ったが、内心は不安でいっぱいだったろう。

ジーンはエドワードをそっと抱き寄せて言った。



「これからは、ずっと傍におります。」

エドワードは、ジーンに抱きついた。

「エドワード様・・・泣いてよろしいのですよ。」

ジーンがその細い肩を抱きしめるとエドワードは泣きはじめた。

「ずっと・・寂しかった。」

そう漏らす言葉がとても悲しかった。




病院の近くのマンションに着くと、エドワードは驚いたように目を見開いた。

「ここは?」

「とにかく、部屋に入りましょう。」

ジーンは、マンションのエントランスに車を寄せると

中からハリーが出てきて、エドワードの為に車のドアを開けた。

「エド様、お疲れ様です。」

ハリーは、そう言いながらエドワードが車から降りるのを助けマンションの中に入った。

部屋に入り、居間に入るとハリーは特製のミルクティをエドワードに淹れてくれた。



部屋を見渡すと、屋敷の自分の部屋にあった調度品が並んでいる。

「屋敷は、どうなったの?」

エドワードは寂しそうに言った。

「奥様が閉鎖すると言われ、私達以外の使用人は解雇されました。」

「そう・・・。」

エドワードは納得したように頷いて聞いた。

「骨董品や絵画は?」

「有名なものはほとんど奥様が売りました。

 しかし、本当に貴重な宝物は、執事だけが知っている秘密の地下室に隠しましたので

 ご安心ください。」

「それを売り払って、使用人に退職金を払ってくれない?

 僕は、皆にとても良くしてもらったから・・・。」

ハリーは驚いたようにエドワードを見た。



まだ、11歳の子が言うことでは無いような気がしたからだ。

「私達は、もしもの時の為に旦那様から一財産を預かっております。

 なので、そちらから皆に退職金を払いました。

 奥様から生活費は戴いておりますが、それ以上はその財産を

 使おうと思っております。」

「ありがとう。ハリー。もう一つお願いがあるんだ。

 父様は、書斎の本の後ろに秘密の金庫を持っていて

 僕はその合鍵を持っている。ナンバーも知っているんだ。

 だから、その中身を取り出して欲しい。

 父様は、何かあったらその鍵を使いなさいと僕にくれたんだ。」

エドワードはそう言いながらネックレスにしていた鍵をハリーに渡した。



「確かに承りました。」

ハリーはそう言いながら鍵を受け取った。

「これからも変わらず、我々がエド様をお守り致します。」

ジーンがそう言うとエドワードは顔を顰めて言った。

「守らなくても良い。傍にいて。昔のようにエドって呼んでよ。

 そうじゃないと、僕、出て行く!」



子供のようなその言い草にハリーとジーンはクスクス笑った。

「それなら、ここにいるときだけエドと呼ぶ。

 それが最大の譲歩だ。」

ハリーがそう言い、ジーンも微笑んでエドワードを抱き寄せて言った。

「これからは、俺らがお帰りって言ってやるよ。」

エドワードはジーンに抱きついてしばらく泣いていた。





次の日の早朝、ハリーは屋敷にこっそりと行った。

屋敷の数々ある装飾品や絵画は外され、売りに出されたようである。

「絵画の大部分が贋物なのだが・・・。」

ハリーはそう独り言を言うと、かつて主人が使っていた書斎に入り

エドワードが言った本を数冊抜き出して金庫を開けた。

そこには、貸金庫の鍵と手紙一束が大切に保管されていた。


夕方、ハリーはエドワードのマンションを訪れた。

「今日は、ジーンと一緒にシェパードパイを作ったよ。

 たまねぎを刻むのって難しいね。」

エドワードは嬉しそうにハリーに言った。

「そうか・・・。ご馳走になるか。」

ハリーはそう言ってエドワードの頭を撫でた。


和やかな夕食を過ごして、眠そうにしているエドワードを眠らせると

ハリーとジーンは居間のソファに座り小声で話をし始めた。

「旦那様の遺言の意味がようやくわかった。」

ハリーはそう言って手紙の束をテーブルの上に置いた。

ジーンはその一番上の手紙を開けると驚愕で目を見開いた。

「まさか、ジュリア様が生きていたのか?」

その手紙には日本人らしき男と手を繋いで微笑んでいる

女の子が写っていた。

目はマクスウェル家の碧色だ。

「生きてらしたんだ。

 でも、それを知って旦那様はなぜジュリア様を呼び寄せなかった?」


ジーンは不思議そうに聞いた。

「この手紙一式の消印は、7年前になっている。

 そして、不思議なことに3年前でぴたりと手紙は止まっている。

 そう言えば、屋敷の絵画を贋物にかけかえらせたり、

 財産の管理を綿密にしはじめたのもこの5年くらいなんだ。

 それ以前はあの雌狐にさせていた。」

「ハリー、探偵に雌狐の身元調査をさせているのもこの頃からか・・・。

 あーー、ずいぶん沢山調査させているな。」



ジーンは、ある調査結果の報告書を見てピキリと固まった。

その報告書の題名は「アラン・ハリスフォードの死について。」

「まさか、父さんの死も?」

「旦那様は、殺人を疑っていたようだ。しかし、閉ざされた屋敷という空間で

 十分な捜査は出来なかったらしい。」

ハリーは肩を落として言った。



「今、ジュリア様は?」

「旦那様も必死に調査なさっていたようだが足取りはつかめないらしい。

 しかし、銀行の貸金庫には、現金がぎっしりと家宝の宝石が全て入っていた。

 そして、エドワード様とジュリア様宛ての手紙もあった。

 もうひとつ、我々宛の手紙もあった。」

ハリーはそう言いながら手紙を差し出した。

その中には、エドワードを支えて欲しいということと、

信頼のおける医者に自分の死体を解剖して欲しいということ。

そして、ジュリアを探し出して欲しいと書かれていた。

「まず、できるのはエドの心を安定させることだな。」



それから数ヶ月が経ち、ロンドンの街にも

クリスマスソングが流れる季節になった。

エドワードは、テレビから流れるクリスマスソングを

一緒に口ずさみながら一生懸命編み棒を動かしていた。



エドワードの隠れた趣味は編み物。

元々病弱で外にプレゼントも買いにいけないので

メイドに教えてもらって作ったのがはじまりだ。

今まで、毎年父親にセーター、お世話になっている

使用人に手袋などの小物を編んで渡していた。


今年は、ハリーとジーンにセーターを贈ろうと編み棒を動かしている。

ジーンと暮らし始めて、エドは自分のできることは自分でしようと決めた。

坊ちゃん育ちの上、病弱なエドは、洗濯するだけでも重労働だったし、

要領も悪かったが、段々コツがわかるようになっていた。



ハリーとジーンは父の私的財産を元手にカフェの経営を始めた。

執事で培ったイギリスらしい本格的なサービスが好評で

店はとても繁盛している。

忙しい中でも2人はエドワードを寂しがらせないように心を砕いてくれている。

寂しかった心も安定し、体力も少しずつ着いてきた。


ジーンは夕方になると帰ってきて、エドワードの散歩に付き合い、

夕食後、お風呂にいれてくれてその時に、

散歩で負担が掛かった足をマッサージもしてくれる。

「こんなに甘やかしてくれていいの?」

エドワードが聞くとジーンは笑いながら「いいんだよ。」と言ってくれた。



この数ヶ月、ジーンは常にエドワードに優しくて

ジーンの存在がエドワードにとってどんどん大きくなって来ている。

「来年は手術を受けて、元気になりたいな。」

エドワードはそう呟いて編みかけのセーターを広げて微笑んだ。



ジーンにはこっそりセーターとお揃いのマフラーも編んだのだ。

「早く、クリスマス来ないかなあ。」

エドワードはそう呟いた。




「おはようございます。エド。」

クリスマスの朝は、そうして起こされた。

目を覚ますと満面に笑みを浮かべたジーンが

エドワードを見下ろしていた。

エドワードは目を擦って起きあがると、

「メリークリスマス。エド。」

と耳元で囁いた。

「メリークリスマス。ジーン。」

エドワードがそう言うとジーンは朝食が出来ていますよと

言って部屋を出て行った。



エドワードは着替えると、セーターを後ろに隠し

鼻歌を歌っているジーンの後ろに言った。

「どうしました?エド?」

ジーンが振り返ったと同時にセーターをジーンに押し付けた。

エドワードは何だか照れくさくなってすぐに自室に戻った。

しばらくすると、ノックの音が聞こえて真っ白なセーターを着た

ジーンが入ってきた。

「ありがとう。エド。セーター編んでくれたのですね。

 似合いますか?」

エドワードは嬉しそうに微笑んで頷いた。

「私もエドにプレゼント。」

ジーンはエドワードに小さな箱を渡した。



その箱にはプラチナのピアスが二対入っていた。

「クリスマスに何が欲しいと聞いたとき

 エドはプレゼントなんていらないから

 ずっとそばにいて欲しい。と言いましたね。

 だから、私はそれをプレゼントにしようと

 思ったのです。

 これがその証。

 私は、生涯あなたの傍でお仕えするという証です。

 私のピアスホールに嵌めてください。」

ジーンはエドワードの横に跪くとそう言った。

「そんなの嘘だ。ジーンだって結婚するはずだし・・・。」

エドワードは震えながら言った。




「ハリスフォード家は、ハリーが継ぎます。

 子供が出来なくたって良いのです。

 私は貴方を守りたい。

 貴方が健やかに育ち、もう私が必要ないと言われるまで

 傍にいたい。」

ジーンがそう言った時、エドワードの中に奇妙な感情が沸きあがった。



それは、ジーンは自分のものだという奇妙な感情。



「ずっと傍にいて。ジーンは僕だけのものでいて。」

エドワードは泣きながらジーンに抱きついた。

その日から2人の耳にはお揃いのプラチナのピアスがつくようになった。




それから、季節は過ぎて春になり夏も近づいて来た。

ハリーとジーンの経営するカフェも軌道に乗り、

支店も出せるほどになった。

ジーンは、事務作業を一手に引き受け、

マンションにいる日を増やし、

エドワードの体力作りの相手をしている。

エドワードの体調も安定し、今秋でも手術を受けても良いと

主治医に進められた。



しかし、エドワードの手術は医学的にとても難しい手術で

万全を尽くすには名医と呼ばれる医者に頼まなければいけないと言う事も

言われた。

だからと言って手術しなければ健康体にはなれず、命も削ることになると

医者は説明した。

「先生、ならどうすればよろしいですか?

 お金なら出す余裕があります。」

ハリーとジーンはそう説明を受けたときに言った。



医者は少し考えて言った。

「私の知り合いにフィリップ・アルフォードと言う名医がおります。

 紹介状は書いてあげれますが彼は今遠い国の病院にいます。」

「それは、どこですか?」

ジーンが聞いた。

「日本です。彼が執刀するなら成功率はぐんとあがるはずです。」

 ちょうど、この病院も彼が働いていた病院と同系列なので

 彼が引き受けてくれるならここで手術もできます。」

そう担当医が話した。

「少しでも、助かる率が高いのなら、日本に行きます。」

ジーンがそう言った。

マンションに向う車の中でジーンはハリーに言った。



「ハリー、考えてみると旦那様の前の奥様は日本人でしたよね。

 その方向で、ジュリア様を探したいと思う。」

「エドワード様には?」

「本当のことを話そうと思う。

 調査会社がつきとめた資料も見せようと思う。」

「自分の母親が殺人を犯したのかもしれないと言うのか?」

ハリーは驚いたように言った。

「ああ。言うつもりだ。

 エド様はあの母親より同じ父の血をひいた姉がいることを

 教えるべきだと思う。」

「それは・・残酷だ・・・。」



「ハリー。マンションのエド様の部屋にはあの雌狐の写真は一枚もない。

 あるのは、旦那様の写真と前の奥様がジュリア様を抱いている写真だ。」

「わかった。ジーンに任せる。

 君が日本に行ってからのこちらの手配は任せてくれ。」

ハリーは、そう言った。


ジーンが機上の人になったのは

それから2週間後のことだった。

ジーンは空の上から小さくなるイギリスを見つめていた。



2週間前、マンションに戻ったジーンは

エドワードにジュリアが生きているらしいと言う事。

調査会社によれば、ミドリとジュリアの殺害に

エドワードの母が関わっている可能性が高いことを話した。

エドワードは悲しそうな顔をしたが、

思ったよりも冷静に事実を受け入れ

ジーンの日本行きに反対することもなかった。

「ジーン、必ずお姉様を連れてきて。

 どうしても、僕の口から父様のことを話したいんだ。」

エドワードは、そう言いながら姉に宛てて書いたという手紙を

ジーンに託した。


エドワードの部屋には手紙の中の写真で一番エドワードが気にいった

ジュリアの写真が飾られている。

それは、日本人の男の人に肩車をされオレンジをとっている写真で

楽しそうに微笑んでいるその目の色はエドワードと同じ碧色だった。



結局、誰がこの手紙を定期的にエドワードの父に送っていたのか

ハリーとジーンの調査でもわからなかった。

「エド・・・待っていてください。

 良いお医者様とジュリア様を必ず連れて帰ります。」

ジーンはそう呟くと、エドワードとおそろいのピアスに

そっと触れた。






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