6:00
「おはよう」
城の廊下を小柄な紫龍が歩く。
ルイは早起きだ。
早く起きて、外に行き思いっきり歌の練習をするのが習慣だからだ。
ルイが城に戻ったあたり多くの者が起きて動き出す。
ルイは石造りの廊下を慣れた様子で歩き、
慧の寝室のドアを開けて中に入った。
慧のベッドの下にいたフィリオがルイを片目で見つめ
再び丸くなって寝た。
「慧・・・朝だよ。」ルイが慧を揺さぶると
「う・・・ん・・おはよう・・・。」と
慧は目をこすりながら起きあがった。
・・・この瞬間が一番可愛いんだ・・・
そう思ったのはルイだけの秘密だったりする。
8:00
「「おはよう。サイシュン。」」
「おはよう。ケイ様。ルイ。」
着替えた慧とルイが寝室の隣の居間に行くと
サイシュンが朝食をワゴンからテーブルにのせていた。
「うわぁ。」慧は嬉しそうに椅子に座った。
目の前には、熱々のお粥にそれにあう
数品のあっさりめのおかずが並んでいる。
・・・そう・・ごはん!!・・・
何でも、白龍は独自の食文化を持っており
生産量は少ないけれど米に似た穀物があるのだ。
こちらの米は薄いピンク色だが味は似ている。
慧は、一口食べて
「あーーー・・美味しい!!サイシュンが料理趣味で
良かった!!」
と満面の笑みを浮かべた。
「ケイ様が喜んでくれて良かった。
たくさん食べろよ。」
サイシュンはそう言いながらおかずを小さな小皿に
盛ってくれた。
10:00
ガキンと刃と刃がぶつかる。
「くーーーっ。」
慧がゼイゼイ言いながら刀を下ろす。
持っている刀は鍛錬用の刀で
紅龍の刀鍛冶が作ってくれた小振りのものだ。
「無理するな。少し休憩するぞ。」
アルが慧から刀を取りあげて木陰に腰をおろす。
慧もアルの隣に座り柔らかな布で汗を拭った。
「ケイ、果実水飲んで。」
アハドがそう言いながら水筒を差し出した。
「ありがとう。」
木陰は涼しくそよそよと風が吹いている。
「風・・気持ちいいな。」
慧はアハドをみあげてにっこりと微笑んだ。
12:00
「ケイ、今日は街でパンを買ってきたんだ。」
ジャンがそう言って大きな皿にパンを開けた。
「ケイ様、厨房からスープもらってきましたよ。」
ニコライが優しく微笑む。
「わあ〜〜〜!!」
慧は嬉しそうにパンを頬張る。
パンを頬張る慧はなにげに可愛い。
「ジャン、街でなんか楽しいことあった?」
「うーーーん。聞きたいか?」
「うん!聞きたい。」
「ほら、ケイ様、頬にクリームついていますよ。」
ニコライが頬を布で拭ってくれる。
「ありがとう。ニコライ。それで、ジャン話教えて!!」
笑い声が部屋中に溢れた。
15:00
「ケイ・・休む時間だ。」
懸命に書類を整理していた慧は
ひょいと後ろから抱かれた。
「ジーク、もう少し。」
「だめだ。」
ジークはそう言うと慧をベッドに降ろし
横の椅子に座ると懐から小さな聖獣を出し
慧のベッドにあげた。
聖獣は慣れたように慧のそばで寝息をたてる。
少しすると慧の小さな寝息が聞こえた。
「良き夢を・・。」
ジークが小さく呟いた。
18:00
昼寝から起きて元気になった慧が食堂に行くと、
ガイが「おちびちゃん、こっち来いよ。」
と手を振った。
紅龍の城の食堂は機能的にできており
いつでも誰でもこの食堂に来ると食事ができるシステムになっている。
雰囲気はちょっとお洒落な大学のカフェテリアという感じだろうか。
もっとも、当主や慧達には、給仕がついているが・・。
慧が席に座ると給仕がすかさず料理を持ってきた。
「おちびちゃん、今日の肉は鹿だ!いっぱい食え。」
どうやらガイが狩ってきたらしい。
「あんまりたくさん食べてはだめですよ。」
ファルが慧にそう言う。
実際慧はいっぱい食べ過ぎて具合が悪くなることがあったからだ。
「ちぇっ。面白くないなあ。」
と言うガイにファルはにこやかに酒をすすめる。
その酒は酔いやすいように薬が入っているのはファルだけの秘密だ。
23:00
美しい歌声が慧の部屋から聞こえる。
ルイが慧だけに歌う眠りの歌だ。
「おやすみ。ケイ。」ルイは慧の頬にキスをすると部屋を後にする。
銀の龍達はこっそりと慧の部屋を訪れる。
「おやすみなさい。良い夢を。そして明日も幸せでありますように。」
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