眠る君へ捧げる調べ 番外編
  
  WEB拍手お礼 慧のリハビリ生活
   
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「おはようございます。ケイ様。」

朝目が覚めるとそばにいるのはニコライだ。

「おはよう。ニコライ。」

慧は眠そうにあくびをしながら言った。

「良く眠れましたか?」

ニコライは慧の着替えを手伝いながら言った。



長い間眠っていた身体は筋力が衰え、

目覚めてから3ヶ月になってようやく

フラフラしながらも少しだけ

歩くことができるようになったのだ。



着替えが終わると、ニコライは朝食を持ってきた。

慧は枕元にあった紫色の水晶のような玉を軽く

叩くと美しい歌声が部屋に流れる。

ニコライがベッドに座っていた慧を抱きあげて

椅子に座らせてくれた。

「ニコライ、幸せだねえ。ルイの歌声で朝御飯。」

慧はそう言いながらニコライが食べやすく取り分けてくれた

朝食を少しずつ食べ始めた。




朝食を食べてカウチで少し休んでいると荒々しい足音が聞こえ、

扉が開いた。


「ケイ、体調はどうだ?」

身を屈めて慧の顔を覗き込んでくる。

「ジャン、今日も調子良いから大丈夫だよ。」

「じゃあ、今日も頑張るか?」

ジャンはニコニコしながら慧を抱きあげ城の一角の

手すりがついた廊下に連れて行くと慧を降ろした。

「昨日より、もう少し歩けるといいな。」

慧はそう言いながら少しずつ歩き出す。

一歩一歩が思うように動かない。

それでも少しずつ歩く訓練をするといつかは元通りに

走れるとファルに聞いたので慧は頑張って歩く。



ジャンはそんな慧をせつなそうに見つめた。

昨日より数歩歩けたところでジャンは

「今日はこの辺でいいだろう?」と慧を止めた。

「え〜〜〜。もっと歩きたいよ。」

慧はそう言いながらジャンをみあげる。

「無理はだめだぞ。」

ジャンはそう言いながら慧の体を抱きあげた。




部屋に戻るとジークが座っていた。

ジャンが慧をベッドに横にさせるとジークが慧の足を

マッサージする。

ジークのポケットにいた聖獣の子供のクーニャの子供が

ベッドにあがってきて慧の顔を舐めると

ぴたっと慧にくっついて眠りはじめた。

慧もつられて目を閉じる。




しばらくして、目を覚ますとテーブルには

昼ごはんが並んでいた。

ジークが慧をだきあげると椅子に座らせてくれた。

ジャンが慧に料理を取り分けてくれる。


「さて、ケイまだ焦っているようだが・・・。」

ジークの言葉は重い。

「う〜〜。でも、もっとできると思うのに・・・。」

慧は小さく口を尖らせて言った。


「何度も言っているが、ケイ、今をあせることはない。

 時間はまだまだあるんだからな。」

「そうだよ。」ジャンもそう言う。

「わかっているんだけど・・・。」

慧は小さく言う。

「ああ。それでも無理はするな。」

ジークはそう言いながら慧の頭を優しく撫でた。




昼食後、少し休んだ頃にアハドが来た。

「今日は海が穏やかで水温も高いがどうだ?」

慧は元気良く頷きながらアハドに手を伸ばした。

アハドは慧を軽々と片手で抱えあげると

海に入る入り口から海の中に入った。


慧は翠の龍人でもあるので

海の中は苦もなく泳げるし、透明な膜が

守ってくれし、浮力があるから

陸よりもスイスイ泳げるのだ。

「エルファのとこ行きたい。」

慧が言うとアハドは後ろから慧をを抱きエルファのトンネルへと

泳いでいってくれた。


「まあ、妃様・・・。ようこそ。」

「エルファ、元気?」

「私より妃様の方がずっと大変でしたのに・・・。」

エルファは、嬉しそうに慧と話をした。

アハドはずっと慧が疲れないように慧を抱いていた。


「そろそろ、皆が心配するから戻ろうか?」

アハドがそう言ったので慧はエルファに「またね。」と言い

アハドに抱かれて城に戻った。



アハドは城に戻ると、慧をベッドに寝かせ温かいミルクを飲ませてくれた。

「アハド・・ありがとう・・・。」

「少し身体が冷えてるからな。ゆっくり休め。」

アハドはそう言うと、布団をきっちりかけた。

慧はうとうとと眠りはじめた。

水の中に入ると結構疲れるのだ。

アハドは慧が眠り始めるとそっと部屋を出た。




「ケイ・・また、夕食食べ過ぎましたね。」

夕食後、ファルに抱えられながら部屋に向う。

「楽しくて・・・つい・・・。」

「ええ。それは否定しませんがね。城の者全員で夕食という

 翠龍の習慣は私も良いとは思いましたが・・・。

 ケイ・・あなたの胃はかなり小さくなっているのです。

 だから、少量ずつ何度も食べるようにしなくては・・・。」


ファルは、ベッドに慧を寝かせると薬湯を持って来た。

慧は苦い薬湯をむりやり飲んだ。

「さあさあ、飲んだら休んでください。」

「う・・ん・・ファル・・眠いから癒しの魔法はいいよ。」

「そうですか・・・おやすみなさい・・ケイ。」

ファルは優しくそう言うと部屋を出て行った。




ファルが部屋を出て行くとケイはサイドテーブルから

ごそごそと紙とペンを取り出す。

サイドテーブルにある紫の玉をこすると明るくなる。

「ルイ・・良いもの贈ってくれたよなあ。」

ケイはそう言いながら紙にいろいろなことを書いていく。



それは、白龍の国リャオテイに行った時のため。

「昨日は・・自治区についてやったから・・・

 今日は、学校についてまとめよう。」

ケイは一生懸命ペンを走らせる。

でも、やはり弱い体には勝てなくて紙をしまうと

灯りも消さずに目を閉じた。



「ケイ・・ようやく眠ったのですね。」

慧が眠った部屋に静かに入って来たのはファルだ。

小さな呪文を唱えると慧の身体を蒼い光が包んだ。

ファルは、サイドテーブルの引き出しから慧の書いた紙を

取り出して溜息をついた。


「まったく・・・。私もつくづく甘いですね・・。」

そう言いながら紙を元に戻し、紫の玉の光を消す。



「ケイ。夢の国でも貴方が護られますように。」

ファルはそう言いながら慧の頭を撫でると部屋をでた。





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