眠る君へ捧げる調べ 番外編
  
  WEB拍手お礼 龍王様のお誘い
   
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〜リューク視点〜

あれは、まだ私達が子供の時。

いつも、教育係りに怒られているのはリューゼだった。


私達は当主になる運命。

リューゼは龍王になる運命。

でも、本来私達の教育にたずさわる銀の龍も妃もいなくて

私達を教育したのはそれぞれ専門の人で

甘える大人もいない私達はいつも一緒だった。



お父様や当主は、いつも私達に優しくしてくれたけれど

皆どこか寂しそうで、お母様のことや銀の龍のことは

聞いてはいけない暗黙のルールがあった。



一番最後に生まれたのがリューゼだったが

金龍の成長は早いはずなのに学問においても

芸術においても、武芸においても伸びない姿に

教育係りは頭を抱えたようだ。



「リューク様はすごいのに・・・。」

「他の方は優秀なのに・・・。」

そんな声が私達の耳にも聞こえていた。



リューゼはそれでもいつもニコニコ笑っていた。

ある夜、私は夜中に目が覚め、他のベッドを見渡した。

リューゼの姿がない。



「トイレかな?」私は眼をこすりながらバスルームを覗いた。

でも、そこにはリューゼの姿はなかった。

私はリューゼが来るまでずっと待つつもりだったが眠気に負けて寝てしまった。



でも、次に目を覚めたときもその次もリューゼはベッドにいなかった。

「ねえ。リューク。夜中に目が覚めるとリューゼがいないんだよ。」

イアンがそう言った。


他の兄弟も口々にそういうのである夜リューゼの後を追うことにした。

あれは、月が綺麗な晩だった。

いつものように世話係が幼い兄弟を寝せた。

皆は眠かったけど頑張って寝たふりをしていた。



少したって、リューゼはそっと扉を開けて出て行った。

私達はすぐにリューゼの後を追いかけることにした。

しかし、途中でふっと消えてしまったんだ。

何度もそう追いかけてみたけどいつも消えてしまう。



そして、戻ってくるのは明け方だ。

結局どこに行っていたかは、今になってもわからない。

それが、リューゼの七不思議の1つだよ。






「リューゼの七不思議かあ。」

慧が面白そうに言った。

「ああ。あいつは追いかけるといつも消えるんだ。」

 それが、リューゼの七不思議の1つだよ。」

リュークが苦笑しながら言った。

「そうなんだあ。」

「ああ。大きくなってからも追いかけたんだけど

 いつも煙のように消えるんだ。これが。」

ロベルトもそう言う。

「ふーーん。」慧は面白そうに微笑んだ。






「ってことを話してたんだけど・・・。」

慧はリューゼの膝の上で愛しい人の顔を見あげた。

リューゼは、その話を聞いて笑いながら言った。



「慧・・・私には見えるんだよ。

 ついてくる姿が・・・。だから消えることも簡単なんだ。」

「ねえ。何してたの?」

「元々金龍はね。眠るのは花嫁を探すときだけで

 後は、休むだけなんだ。そう体ができている。

 だから、小さな時は抜け出して癪だから勉強したり

 剣の練習をしていたり・・・。」

「え〜〜〜。リューゼ。怒られてたんじゃないの?」



「それは、適当に手を抜いていたから・・・。

 ほら、大人は優劣つけたがるだろう?」

「案外リューゼって・・黒い?」

「知らないな。私は闇龍でなくて金龍だぞ。」

「そういう意味じゃなくて!」

「それでだ・・慧・・・。」

リューゼは小声で慧に囁いた。


慧はリューゼの顔を嬉しそうにみあげてコクリと頷いた。



・・・起きた暁には、一緒にこっそり出歩こうな・・・。






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